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第十三章・7
真輝の言葉通り、沙穂は彼と共に屋敷へ戻った。
「堂々としていればいい。ここはすでに、君の家なんだから」
(でも……)
やっぱり緊張する!
そして彼らを一番に出迎えたのは、やはり武井だった。
「お帰りなさいませ、真輝さま」
「うん。留守中面倒をかけたな」
そして。
「お帰りなさいませ、沙穂さま」
「え? 武井さん!?」
武井は、にっこり微笑んでいた。
「真輝さまが、もうこれ以上ふらふらすることのないよう、しっかり捕まえていてください」
「ありがとうございます……!」
私からも礼を言う、と真輝は武井にうなずいた。
武井も、真輝にうなずいた。
「真輝さまが庶民の暮らしに一日も耐えられるはずはない、と思っておりましたが」
「私をみくびるな」
「はい。沙穂さまと共にならば、どんな境遇でも前に進んでゆかれることが、この武井にもしっかりと伝わりました」
どうか、これからも。
「真輝さまのことを、よろしくお願いいたします!」
武井の目には、涙が光っていた。
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