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第十四章 永遠の愛
朝食後、朝の爽やかな光の中、真輝は沙穂と連れ立って緋のカーペットが敷かれた回廊を歩いていた。
「沙穂に渡したいものがある」
「はい」
(でも、なぜ武井さんも一緒に?)
その疑問は、武井の心中にもあった。
(真輝さまは、何をお考えに?)
そして三人は、美しい白い扉の前に立ち止まった。
「ここは、奥様の」
武井の声に、真輝はうなずいた。
「そう。沙穂、ここは私のお母様の部屋だ」
鍵を開け、薄暗い中に入る。
真輝は窓辺へ行くと、カーテンを開けた。
「時々風を通してはいるが、この部屋はあの時のままにしてあるんだ」
「そうなんですね」
真輝の言葉には、彼の深い悲しみがにじんでいた。
(真輝さんは、ご両親を心から愛してらしたんだ)
だが、と真輝は武井に命じた。
「この部屋は、今日から沙穂のものだ。片づけを、頼む」
「真輝さま、よろしいので!?」
「私も、お父様の。当主の間に移るよ」
よくぞ、ご決断なさいました、と武井はまた泣きだす勢いだ。
「その前に」
真輝は、螺鈿の細工が施してあるジュエリーボックスから、小箱を取り出した。
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