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第十四章・4
当主の間。
その寝室のベッドの上に、真輝と沙穂はいた。
横たわり、互いの髪を手櫛で梳き、愛おしんでいた。
「沙穂、ピルは?」
「飲むことを、止めました」
それでいい、と真輝は微笑んだ。
「ここは、私のお父様とお母様が愛し合った場所だ」
「はい」
「沙穂。私の子を、産んでくれるね?」
「……はい」
照れてうつむいてしまった沙穂の頬を両手で挟み、真輝は口づけた。
「今夜の君は、どこか違う。下世話な言い方をすると、とてもそそられるよ」
「今日は、お薬を飲んでいないからかもしれません」
「ピルを?」
「発情抑制剤も」
真輝さんの赤ちゃんが欲しいのは、僕も同じです。
沙穂も、真輝がしたように彼にキスをした。
「ああ、Ωのフェロモンに酔いそうだ」
「大げさですね」
くすくすと笑いながら、二人抱き合った。
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