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第十四章・7
果てて息を弾ませる沙穂を、真輝は労わった。
身体を拭き、水を飲ませ、肌をさすった。
「大丈夫か、沙穂」
「はい。ごめんなさい」
起き出して真輝の身体を拭こうとする沙穂を、彼は止めた。
「いいから、そのままゆっくり横になって」
「でも」
そんな沙穂のお腹に、真輝は耳を当てた。
「赤ちゃん、できたかな?」
「もう! 気が早すぎます!」
二人で笑い合い、優しいピロートークを楽しんだ。
「名前は何にしようかなぁ」
「真輝さんみたいに、凛々しいのがいいです」
「沙穂みたいに、柔らかい響きのもいい」
二人で指を絡め、沙穂の腹に乗せた。
「武井が張り切って、名づけ辞典を何冊も買ったよ」
「誰もかれも、気が早いですね」
もし、子どもに恵まれたら。
「沙穂のように、優しい子に」
「真輝さんのように、思いやりのある子に」
未来を語る時間は、心地よくさらさらと流れていった。
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