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第8話

はあ、はあ、はあ 3人の荒い息だけが洞窟の中で響く。 「大丈夫?水飲んで?」 風が全員に水を入れたコップを手渡す。 それを3人して息もつかずに一気に飲み干した。 「多分、追っ手はまけたはずだ。」 「僕、外を見てこようか?」 立ち上がりかけた風の腕を引っ張る。 「ダメだ!お前はどこにも行くな!風、頼むから俺のそばにいてくれっ!」 ぎゅっと握った手を風も握り返してくる。 ぐっと引っ張って俺の隣に座らせた。 風が俺の肩に頭を乗せる。その重さにほっとして陸と水を見る。 二人はもぐもぐとカバンの中に入れたパンを横になったままで食べていた。 「行儀悪い奴らだな。」 風がクスッと笑って、 「そうだね。でも、二人ともよく頑張ったし、今だけは…ね?」 「しかたねえなぁ。俺たちも食うか?」 「そうだね。はい、どうぞ。」 受け取ったパンを食いちぎりながら、これからのことを考える。 一応、この先に何ヵ所かの隠れ家がある。 どこへ行くか? 3人の顔を見回す。 人間の側で暮らせば、仲間達はあまり近寄れず時間稼ぎはできる。 だが…と、さきほど嗅いだ血の匂いを思い出す。 人間の側で暮らせばああ言うことも起こる。 何の罪もない婆さんを無惨な目に合わせてしまった。 やはり、人里離れた土地で暮らすか… 「雷、大丈夫?」 風の目と合って、その奥にある翳りを見る。 風も不安だよな…人間達に犠牲は出したくないが、俺達の平和な生活のためにはやはり…。 「風、ここから少し遠いが、今までと同じような環境に家を建ててある。そこでいいか?」 「もう行くの?」 陸がゴロゴロと寝転びながら聞いてくる。 「そうだな…できれば早い方がいい。」 「えぇーーーっ!もう疲れたよぉ!」 手足をバタバタとさせて抗議する。 「分かってる。3人とも俺が背中に乗せていくから大丈夫だ。ともかく、匂いも何もかも消してからここを出る。」 「どれ位かかるの?」 陸のバタバタする足を掴んで止めさせると、水が尋ねた。 「夜、いや夕方までには着けると思う。 今夜は暖かいベッドで眠れるはずだ。」 「だったら、僕は走るよ。ねえ、陸もまだ頑張れるよね?」 にっこりと笑って、しかし有無を言わさない迫力で陸に尋ねる。 あれじゃあ、やだとは言えないだろうなぁ。 誰に似たんだか、いつもはおとなしい水だが時々誰も逆らえない迫力のある凄みを見せる。 今も、陸は野生の勘でそれを嗅ぎ取っているのか、しゅんとした顔になってイヤとも言えず頷いて答えた。 「うぅー、分かったよ!でも、行けるところまでだからな!」 二人の言葉にこんな時にも関わらず成長を感じ、少し目頭がじわーっと熱くなる。 しかし、そんなことはお首にも出さず、臭い消しをし始める。 10分ほどで終わらせると、皆を見回して声をかけた。 「よし、じゃあそろそろ行くか…風、しっかり掴まってろよ!」 うんと頷く風を背中に乗せ、全員で洞窟の外に出た。

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