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第11話
まさか、こんなことになるなんて…。
膝に乗っけた水の頭を撫でながら、風は先程の出来事を思い出す。
いつものように木の実をとりに行くと、いきなり後ろから羽交い締めにされた。横を見ると水はすでに意識がなく、見知らぬ男に抱えられてぐったりとしている。
「暴れません。あなた方について行きます…だから水には手を出さないで!」
ふっと腕が緩み、そこから抜け出すと水の元に駆け寄った。
「水、大丈夫?」
答えの返ってこない水を抱きしめると、風の目から涙が溢れた。
「おい、乗っかれ!」
雷と同じ銀色の狼が風に向かって顎をしゃくる。
こくんと頷くと、水をその場に寝かせる。
「子も一緒にだ。」
狼の言葉に風が一瞬口を開きかけるが、こくんと再び頷いて水の体を肩で支えて狼に跨った。
「行くぞ!」
風が雷達がいるであろう家の方向に頭を向けようとしたが、途中で首を前に向け、水が落ちないようにその体をぐっと抱きしめた。
どこをどう走ったのかわからぬほどの速さで、あの日雷と逃げ出した村に着いた。
水の意識は戻ってはいたが、まだふらふらとしている身体を支えるようにして二人が狼の背から下りる。
すっと人に戻ったそれが風に近付き、水を引き離した。
「やだ!水を返して!!」
他の男に引き渡された水も風の名を呼んで泣き喚く。
「うるせえっ!おい、一緒の部屋に連れて行け!」
ドンと背中を押され、風もそばにいた男に腕を掴まれた。
「水…大丈夫だから…」
そっと水の頬に手を触れると、ようやく水が落ち着いて頷いた。
そのまま、二人はかなり豪華な部屋に入れられ、ベッドに転がされた。これからどうなるのかわからない不安と恐怖で怖がる水を風が寝かしつけるようにして、落ち着かせていた。
そこにいきなりバタンと勢いよく扉が開き、水がビクッとして体を起こすと風に抱きついた。
その身体をしっかりと抱きしめた風が、入ってきた先程の狼だった男を睨んだ。
「ふっ。俺を睨むとは…風、お前も偉くなったもんだな…」
ゆっくりと追い詰めるように近付く男に、風の身体が震え出す。
それに気がついた水が心配そうに風を見上げた。
「大丈夫?」
しかしその答えは風から聞くことはできなかった。
近づいた男が水を風から引き離すと、そばにいた男が水を縛り上げた。
その間に水に駆け寄ろうとする風を男の手が捕らえ、ベッドに引き倒すとその上に馬乗りになった。
横を向く顔を掴んでその鼻にガラス瓶を近付ける。
息を止めた風の片側の鼻を押し、口を押さえると、苦しさに我慢できなくなった風が勢いよくガラス瓶の中身を吸い込んだ。
ゲホゲホと咳き込む風の身体から力がぬけていく。
そっと男が風の顔を撫でると身体がビクンと反応した。
「風に何をした?!」
水が大声で騒ぎ立てる。
「ちょっと身体を動かなくして、少し気持ち良くなる薬を嗅がせただけだ…へぇ?もう反応してる…」
ぺろっと唇を舌で舐めると、男は上着を脱ぎ捨て、風に覆い被さった。
「やめろーーーーーっ!!」
水の悲痛な叫びが部屋に響いた。
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