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第13話
「雷、どこに行くの?」
背中に乗ってしばらく経った頃、陸が俺に尋ねてきた。
「俺の、そしてお前と水の故郷だと思われる村だ。」
「え?!どういう事?」
「お前さ、この世界に俺達みたいなのがあちこちにいると思うか?」
ふるふると陸が頭を振る。
「俺も獣人の村自体、風の村位しか知らねぇしな。」
「分かっていたのに、何で拾った時に俺と水を村に連れて行かなかったの?」
「それは…分かっていても返せないこっちの事情があったんだよ。
大体、何で俺達の居場所を知っていながら何の手出しもしてこなかったのかも、今考えてみると不思議なんだよな。」
「雷?」
「あ?!あぁ、何でもない。」
「ねぇ、前に皆んなで逃げたのって…」
「あぁ。あの時はまだお前達も小さかったから、説明はしなかったんだっけな。」
「今なら教えてくれる?」
陸の言葉に、風の顔が浮かぶ。水と一緒にいる時にきちんと話すつもりだったが、こうなっては仕方がない。
走る足を止める事なく、陸に俺と風のことを話した。
俺と風は狼と兎の異種獣人である事。異種の間の恋愛は禁止されている事。それでも愛し合い、二人でお互いの村から逃げた事。
その所為で、両方の村から追手がかかっている事。
そこまでじっと話を聞いていた陸が口を挟んだ。
「何で、二人はこんな大袈裟に追いかけられているの?もうこんなに時間が経っているんだから、諦めてもさぁ。」
あんまり考えていないように見えて陸は時々、こちらが聞いて欲しくない事を抉ってくるような質問をしやがる。
苦笑いしながら、陸を振り返る。
「なんで?」
ほんと、無邪気に聞いてきやがる…
深呼吸をして、仕方なく話し出した。
「俺も風も…村の長の息子なんだ…しかも二人共に長子なんだ。」
「でも、たかだか村だろ?」
「お前の考えてる村とは規模が違う。長というよりも王に近い。小さいとは言え城もあるしな。」
「え?」
流石に驚くよな…
「すっげぇーーーー!」
「は?」
「じゃあ、雷も風も王子様なの?」
「王子…なんて言われるとくすぐったいけれど、まぁ、そう言うことだな。」
まったく、気楽なもんだ。
「でも、なんで雷じゃなくて風が連れて行かれたの?」
一番聞かれたく…いや考えたくなかった質問だ。
「俺への…俺への見せしめだ…多分風はもう光の手で…あぁ、くそっ!」
「え?まさか殺され…てる?」
陸の体が震えている。
「いや、殺されはしない。あいつも向こうの長の息子。殺して、あっちと戦うなんてことにはしたくないはずだからな。でも、それよりも、死よりも風には辛いことだ。くそっ!」
「水は大丈夫かな?」
「それが不思議なんだよな。なんで、水も連れて行ったのか…それが分からない。最悪、あの場で殺しても良かったはずだ。死体もないし、匂いも消されている事を考えると、一緒に連れて行かれたと考える他ない。」
「水、辛いことされていないかな?大丈夫かな?」
少し涙声で俺に尋ねて来る。
「まだ、ガキだ。手を出しはしないだろうよ。あともう少しで着く。おい、スピード早めるぞ!落ちないようにしっかり捕まっとけ!」
「分かった!」
そう言って、俺にしがみつく陸の体温を感じながら、どうか間に合ってくれと願うようにスピードを早め走った。
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