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第15話
「やぁああああああああっ!」
光に尾を咥えられカリッと甘噛みされた瞬間、風の身体がびくんと大きく跳ね上がり、腹に白い液体が飛び散る。
「マジですげぇな、この尻尾。甘噛みでこれか…だったら強く噛んだら…くくく、面白ぇ。おい、風!」
ぐったりと肩で息をしている風が光を見上げる。
「助け…て、雷…たす…け…やぁあああああ!」
その言葉を聞いて、光が風の尻尾をぎゅっと握る。
「雷の名前なんか呼んでんじゃねぇ!それにな、助けに来た時があいつの、雷の最期だ。」
「え?どういう事?」
「お前を連れ去れば、雷が助けに来る…しかも頭に血が上った状態でな。そこを殺るんだよ。しかも、こんな状態のお前を見たらあいつはどうなるんだろうな?訳の分からない状態になって、こちらの思う壺。まぁ、こちら側に相当な被害が出るのは想定内。それよりもその隙を突いて、俺がお前の目の前で雷をやってやるよ…そうすれば雷を諦められるだろう?ん?
お前は一生後悔に苛まれ、愛する雷を殺した俺に死ぬまで愛されるんだよ。最高だろう?」
「ひどい…何で、兄弟なのにそんなこと出来るの?!」
風の発した兄弟という言葉に光の顔が怒りで真っ赤になり、掴んでいた尾を力任せに握った。
「あーーーーーーーーっ!」
痛みに叫び声をあげ、そのまま風は意識を失った。
「ちっ!意識のないやつを抱く気なんて起こんねぇわ。おい!入って来い!」
扉がすぐに開き、先程の男が再び入ってきた。
「ガキを解いてやれ。おい、ガキ!風の後始末をしておけ!」
身支度を整えながらそう言うと、後ろを振り返ることなく部屋から出て行った。
「これを使って下さい。それと…もう少しの…いえ、何でもありません。それでは、後で食べ物をお持ちしますので…。」
「もう少しって、何がもう少しなんですか?」
扉から出て行こうとする男の背中に向かって、水が問いかける。
「何でもありません。」
「あなたは、優しい人だ。僕を縛る時も気遣ってくれてるし、毛布も渡してくれた。ねぇ、もう少しで何が起こるの?」
男が開きかけた扉を閉めた。
「出て行く準備だけしておきなさい、この場所から。そして、光様に見つからぬ遠い場所にお逃げ下さいと雷様に伝えて下さい。それから…よく育てて下さいましたと。私と私の従兄弟が犯した人の女との間に出来た罪の愛し子達。最後に会えてよかった。どうか、無事に…」
そう言って、さっと扉を開けて男が出て行った。
水は思いもかけない話に一瞬時が止まったようだったが、はっとしたように男の背中に向かって声をかけた。
「待って!」
しかし、水の声は扉によって阻まれ、男には届かなかった、
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