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第16話

水が風の身体を拭き、ベッドの下に落とされた毛布を拾い上げてその身体にかける。 青ざめた顔でいる風の横に座ると、心配そうな顔でゆっくりと額に手を当てた。 「…あったかい。水、ありがとう。」 風がそっと目を開けて、痛々しい笑顔を向けた。 「風!大丈夫…じゃないよね。でも、出て行く用意をしておけって。それで今度は見つからない位に遠くに行けって言われたんだ…だからっ!」 「誰がそんな事を言ったの?」 「僕を縛った男の人…もしかしたら僕か陸の父親かもしれない。」 風がガバッと上半身を起こす。 「どう言う事?」 「よく育ててくださったって、私と私の従兄弟が人の女との間に作った罪の子達って、そう言っていた。」 「やっぱり、そうか。」 納得したように頷く風を水が見つめる。 「僕たちの居場所を知って君達を置いて行ったのに、その後何年も追っ手は来なかった。あのね、僕たちが人と結ばれるのは第一級の罪なんだ。しかも、子までできたとなるとその子共々死刑ということもある。だから、僕たちに託したんだろうな。必死に探して、僕たちに見つかるように置いて…そうか。」 風が頷くと水がその身体に抱きついた。 「どうしたの、水?」 「僕と陸は雷と風の子供だ。他の親なんて、しかも見たこともない親なんて知らない!」 水の目からは涙が溢れ出て、風の体を温かく濡らしていく。 「そうだね。水と陸は僕たちの大事な子供だ。大事な家族だよ。水、どうか忘れないでいてね。」 風が水の頭を優しく撫でる。 「風、何でそんなお別れみたいな事を言うの?ここを出て、みんなでまた暮らすんだよ!」 「出来ないよ!こんな、こんな身体を雷に見せられない…ごめんね、水。水だけ逃げて。」 「イヤだ!絶対にイヤだ!風が帰らないなら僕も帰らない!」 「水…」 困った顔で風に見つめられた水が、ぎゅっと風に抱きつき、風もその身体を優しく抱きしめた。

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