19 / 90
第19話
「雷っ!!」
扉の裏から待ち伏せをしていたのであろう光が、手にナイフを持ち、俺の名を叫びながら飛び出して来た。
「っざけるなよ!」
陸と水を俺の後ろに隠すようにして前に踏み出し、その反動を利用して光の腹を思い切り蹴り飛ばす。
カランカランとナイフが光の手から転がり落ち、廊下に金属音が響いた。
「くぅうっ!」
廊下に転がり、腹を抱えて七転八倒している光に近付く。
「お前、二度と俺達の前にその顔を見せるなよ…それと風も陸も水も俺のものだ。もし再び手を出したら、その時は容赦しない…この村ごとぶっ潰す!いいな!」
恐怖でただ頷くしかできない光の腹に向かって思い切り上げた足を振り下ろす。
ぐしゃっと硬いものが砕ける感触を足裏に感じた。
「ぐああああああっ!!」
光の叫び声が城中に響き渡る。
だが誰も光を助けようとはしない、いや、動けないの方が正しいだろう。
しかし、その中でたった一人光に近寄る男がいた。
それを見て水が一歩踏み出そうとしたが、グッと踏みとどまる。
風が俺にそっと囁いた。
「雷、あの人が陸と水を家に置いて行った人みたいだよ。」
え?と言う風に男の顔を見る。
「桐か?」
俺が呼ぶ声に光の体を助け起こしながらこちらを向いた。
「はい。お久しぶりでございます、雷様。」
「俺と光の兄弟分だ。あいつは?」
「笹は…死にました。」
「そうか…それで?」
促す俺の目から視線を外し、周りの奴においと声をかけた。
その声にようやく動き出した人々が、光を連れて行く。
それをじっと見守り、皆のいなくなった廊下に俺達と桐だけが残された。
「それで、お前だったのか?」
桐が俺達の前で膝を折ると床に頭を擦り付けるほどの土下座をする。
「雷様、どうかこれ以上は勘弁して下さい…ただ一言、感謝しています。」
言うと、立ち上がって振り返らずに光が連れて行かれた方へかけていこうとする。
そこへ水が大声を出した。
「僕らは兄弟…なの?」
その含みのある言い方に風と顔を見合わせる。
桐の足が止まり、こちらを向く事なく、頭を横に振る。
「血は薄い…」
それだけ言うと、今度こそ桐は廊下の先に消えて行った。
ともだちにシェアしよう!