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出会い–1
「なぁなぁ、雷?」
ここ数日、雨が続いて外に出ることも出来ず、家の中でのやることも無くなった陸が、ソファで本を開き読むふりをしながら、風が台所で忙しなく動く姿を盗み見していた俺の腹の上にドスンと乗っかって来た。
「ゲホゲホゲホ…!って、いきなり乗るんじゃねぇよ!小さかった頃とは違って重いんだよ!!」
「なぁ、雷と風ってどうやって出会ったの?」
こいつは本当に人の話を聞く気がねえな…
ため息をつくと同時にガタンと台所から何かが落ちる音がした。
「風!大丈夫っ?!」
水の焦った声がする。
陸を落とすようにどかすと台所に走った。
「どうした?」
飛び込んできた俺を見て水が唖然とし、座り込んでいる風がくすくすと笑った。
「雷、大丈夫だよ。持っていた鍋を足の上に落としただけだから…っ!」
そう言って立ち上がろうとした風が崩れ落ちるように再びしゃがみ込んだ。
「痛むのか?!」
軽いとは言え、大きめの鍋が足に落下したんだ。そりゃあ、痛いのは当たり前だろう。
大丈夫と言うように首を振ると、水に助けられながら立ち上がろうとする。
「バカ、無理すんじゃねぇよ。」
水にかけた手を奪うように引っ張り、両手で抱き上げる。
水が再び唖然とした顔になり、風が真っ赤になって、大丈夫だからと降りようとする。
「歩けないんだから、大丈夫じゃねえだろう?抱かれるのが嫌なら、そうだな…あの時みたいに咥えてやろうか?」
クワっと、いつもは隠している牙を剥き出す。
「ヤダっ!雷のイジワル…ばか。」
胸に顔を埋めているが、俺の目から隠せていないうなじが真っ赤になっているのが見て取れる。
「あの時って?」
台所から出て来た俺達の周りを陸が小蝿のようにくっついて来て邪魔くさい。
「出会った時だよ、俺と風が。」
まるで我が意を得たりとでも言うように陸が目をキラキラとさせる。
「俺、それを聞きたかったんだよ!なぁ、水も聞きたいだろ?」
同意を得るように、やはり台所から出てきた水に尋ねる。
「それは…まぁ、気になるけど。」
陸ほどではないがこちらを見たその目に好奇心が見て取れた。
ソファに風を抱いたままで座ると、風が降りようとするのをグッと力を入れて阻止する。
「雷、降ろしてよ…」
震える声で俺に囁く風が可愛くてついいじめたくなるって言うのは、ガキ臭えなとは思うがやめられないんだから俺も大概だよなと思いつつ、言葉で答える代わりに腕に力を入れた。
「んっ。雷の意地悪…」
風の苦しげな声に俺の体がピクンと反応する。
それに気がついた風が焦ったようにもぞもぞと動いた。
「動くともっとやべぇって…静かに抱かれとけ。」
風に囁くと、真っ赤な顔で頷いた。
「なんかこそこそ話してるの気になんだけど…それはそれとして、なあ、出会いのこと聞かせてよ!」
陸が俺の前に膨れっ面の顔を出す。
「ったく、仕方ねぇな。」
「雷っ!!」
風が焦ったように俺の顔を見上げる。
大丈夫だよと目配せして、キラキラした4つの目に語り出した。
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