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風の嘘–4

「水…あれって雷に許してもらえたってことでいいのかな?」 「うん!雷は許してくれたんだよ!だって、陸は僕達の大事な家族だもん。許すに決まっている!」 床に座ったままの俺の腕を引っ張り上げてベッドに座らせると、自分も横に座って水が静かに話し出した。 「あのね、風のことなんだけど…」 「うん?」 「風のお父さんがね、亡くなりそうだったんだって。」 「え?風のお父さんってことは狼で言うと王ってことだよな?」 うんと水が頷く。 「それで、風の弟って言う人が風を探し当ててね、僕達のいない間に何度か風は弟さんと一緒にお父さんに会いに兎の村に行ってたんだって。それで、この先の兎の村の事とか、後継の事とかの話をして来てたんだって。」 「そう…だったのか。」 「それで、僕が陸に服を破かれて家に戻ったあの日、お父さんが亡くなったんだって。それで帰って来るのが遅くなって、僕が疑いを持ってしまったってわけ。」 「そうか、風のお父さん、亡くなったんだ。」 「そう。お父さんの後は風の弟さんが継ぐし、もう子供もいるから風の方もこれで一件落着っていうのもアレだけど、まぁ、そう言う事。」 「だったら、そう言ってくれたら良かったのに!」 そう言って憤る俺の手を握って水が首を横に振る。 「陸も風が雷の、狼の村に誘拐されたあの事、忘れてはいないでしょ?もしも、兎の村に行きたいって雷に言ったとして、それをあの雷が許すと思う?」 「許さないどころか、それこそ鬼のような顔して風を軟禁くらいはするな!」 「僕もそう思う!」 「それで風は雷に黙って行かざるを得なかったってことか。」 納得して頷く俺に、水もそうそうと頷き返した。 そんな相手を見て、堪えきれずに笑いが部屋に満ち溢れる。 ひとしきり笑うと、俺は自分のしでかした事を思い出していた。 ぐっと風の口を塞いだ時の激しい抵抗。 この手に残る段々と弱くなっていく呼吸。 体から力が抜けて、崩れ落ちた時の重み。 「陸?どうしたの?」 水の心配そうに覗き込む顔に目がいく。 「なんでもないよ、水。ただね、ただ少しこの手の感触が俺を狂わせそうで…怖いんだ。だから水、抱いていいか?この感触を、この感情を消し去ってしまいたいんだ。俺のこの恐怖と狂気を水の身体で忘れさせてくれ!」 答えを聞く前に水の頭をぐっと掴んで唇を合わせたまま、身体を押し倒す。 俺の頭を水の手が掴んで自分に引き寄せると、俺の目を見つめて唇を合わせたままで答えた。 「いいよ。僕の身体で陸が楽になれるなら。もう今日は雷達も部屋から出ては来ないだろうし。陸、僕が陸の全てを受け入れてあげる。僕が陸の風になってあげる。だから、いっぱいいっぱい僕に陸をちょうだい。」 「あぁ。俺も水の雷になる。金狼には到底叶わないけれど、それでも強くなる。水を守れるくらいに強くなる。だから水、俺のことを見ていてくれ。水、愛してる。」 ぎゅっと抱きしめると水も俺にしがみつくように抱きつき、こくんと頷いた。

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