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風の隠し事-2
「ん…んん…んーーーーーーーー!!」
塞がれた口から甘く悲痛な悲鳴が溢れる。
媚薬のせいでいつもよりも敏感になっている身体に下半身を縛り上げた戒めの紐が食い込む。
見ているこっちが痛むほどだが、それでも頑なに風は口を割らない。
「なぁ、風。」
何度目かも忘れた風の中で果てた俺が、イけずに苦しそうな顔で泣く風の顔を俺の方に向けて尋ねる。
「金狼化してヤろうか?」
「…んんんんん!!!!」
風の目が一瞬大きく見開き、頭を大きく振る。
「あぁ、少し薬が切れかけてきたみたいだな…ほら、嗅げ!」
嫌がるように再び振ろうとする風の頭をガッチリと掴むと、観念したように俺の顔を恨めしそうに見ながら息を吸い込む。
「おいおい、そんなんじゃ効きが悪いだろう?一回鼻つまむぞ。」
浅い息で吸い込んだ風の鼻をつまみ、顔が赤くなるまで数十秒待って手を離す。
俺の耳に届くほどに深く息を吸う音が聞こえ、すぐにその身体からだらんと力が抜ける…一箇所を除いては。
「なぁ、ここさ、このままにしておいたら腐り落ちるんじゃねぇか?風はここはいらないんだし、それでもかまわねぇか…へぇ?俺にまだそういう顔ができるのか…だったら金狼化、してもいいよな?」
風が必死に嫌だと許してと言うと思ったが、何も言わずに視線を俺から外した。
「意味、分かっているよな?」
再度、風の顔を俺の方に向けさせて問う。
それでも風は俺を一瞬見つめるだけで視線を外した。
「そうかよ!風、壊れても文句言うなよ!お前は俺がそうするだけの事をしたと言う事なんだろう?だったら、お前の望み通りにしてやるよ!」
気を高め銀狼化した俺が再び気を高め、金狼化する。
それだけで、かなりのエネルギーが消費されたのが分かる。
これだけのコトをした後だし、もって5回か…
ぶるんと一回身体を震わすと、青ざめ震える風の体に前足を乗せる。
「覚悟は…いいな?」
びくんと体が揺れて、自分の胎内をこれからこじ開けようとしているモノを見つめた。
金狼化は銀狼化よりも体が大きくなる。それは下半身も同じで、人間の時とは比べものにならないほどの大きさと太さに、俺自身も初めて見た時はごくりと喉が鳴った。
それを風はこれから人の身で受け入れようと言うんだから、恐ろしさのあまり薬がなくても動けなくなるだろう。
風の体をうつ伏せにすると、腰をぐっと突き出す。
ぎちっという音とあれだけ緩ませたはずの穴がキツく抗う。
「んんんんんーーーーーーーーーーっ!!!」
風も思っていた以上のモノに、身体が縮み上がり、悲痛な叫び声を上げる。
「本っ当にこのまま進んでいいのか?」
動きを止めて再び問うと、風が何かを言いたそうに俺の顔を見た。
口で風の口を塞ぐ布を取ると、風が堰を切ったように話し出した。
「女を抱けって…僕の子を村の長にするから、その子種を女に植え付けて行けって…そんなの、僕には…無理って…雷に愛されたいだけの僕が、女を抱けるわけないのに…そんなの無理なのに…なのに、部屋から出さないって…二人きりにさせられて…だから、出る為に…出なきゃいけないから…雷の元に帰る為に…」
「…したのか?」
金狼化を解いて人の体に戻り、風に尋ねた。
「出来ないよ!僕は雷とじゃなきゃ…こんな風にならない…それでも、その身体に、柔らかな身体に触れて… 雷もやっぱり女の人の方がいいんじゃないないかって…だから…雷を女の人に取られたら…そんな事になったら…って、だから僕!雷を女の人に取られないように…そんなの嫌だから、だからそうならないようにって…考えて…それで…」
「ああ!もう、わかったよ!」
馬鹿馬鹿しさに怒っていた感情が冷めていく横で、風はひっくひっくと肩を揺らして泣いている。
その肩を掴んで起き上がらせると、くたっと力の抜けた身体をあぐらをかいた上に乗せる。
「お前さぁ、それでどうやってその部屋から出られたんだよ?」
「…弟が、夏(なつ)が助けてくれた。実はその女って言うのが夏の子供を身篭っていて。」
「でも、触れたんだろう?」
少し怒ったように言うと、焦ったように風が答えた。
「部屋から出る時にハグをしたんだよ…それで、柔らかかったから…やっぱり雷もそっちの方がいいのかなって…思って…」
「バカか?!」
ぐっと腰を突き出し、風の戒めを取る。
「あっ!あーーーーーーっ!!」
今までの風の悲しみや辛さ、俺への想いが溢れるように放たれ、ガクガクと身体を揺らす。
「俺だってお前と一緒だって、何でそう思わないんだよ!?俺はそれがたとえ男だろうが女だろうが、風じゃなきゃ勃たねぇ!今さら、他のやつなんか抱かねぇし、抱けねぇよ。…大体、俺とお前は運命だろう?お前は俺のこの感情の昂りを治められる唯一の存在だろう?」
「雷ぃぃいいいいいっ!!」
俺の名を呼びながら頷き続け、何度も果てる風を抱きしめ、俺も風への愛しい想いを、その胎内に放った。
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