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風の隠し事-3
俺の横ですやすやと寝息を立てる風を見つめ、額に軽くキスをすると、下着だけを履いて扉を開ける。
リビングに向かい、廊下を歩いているとカチャリと音がして、水が顔を出した。
「雷…風は?」
こいつも風の異変に気がついていたか…
「陸はどうした?」
「寝てる。…それで、風は大丈夫?」
「大丈夫だよ。俺がついてるんだ、大丈夫じゃないわけないだろう?ん?」
そう言って頭を撫でると、良かったと言って微笑む。
「雷はどこに行くの?」
「水を取りにな…そろそろ風も目を覚ましそうだし。」
「だったら、僕も行く!」
そう言って水が扉からぴょこんと出てくると、ふわっと髪が浮き、金髪が煌めいた。
「お前も風みたく我慢すんなよ?言いたい事、悩み事、何でも俺に、俺と風にぶつけろ。俺達はお前も陸も守るってあの日に、お前達を育てると決めたあの日に誓った。だからいつだってお前達の味方だ。いいか?俺達は誰が何と言おうと最高の家族なんだ。俺はそれを守る。だからもっと俺達を、俺を頼れ!いいな?」
そう言ってぐしゃっと頭を撫でると、俺を涙目で見つめて大きく頷いた。
水の入ったグラスを二つ持って水と別れて部屋に戻ると、風がゴソゴソと何かをしているのに必死でこちらには気が付いていない。
そっとグラスをテーブルに置いて、後ろから両手を掴む。
「ぅわっ!…って、雷かぁ…驚かせないで…あっ!」
風の持っている小瓶を取り上げると、風が残念そうな顔をした。
「捨てる気だったな?」
「黙秘!」
そう言って横を向き、口をつぐんだ。
「ふぅん?だったら、もう一度これを使うか…それとも金狼化するか、どっちにする?」
びくっと身体が跳ね、俯いた口から小さな声が聞こえた。
「どっちも嫌…です。」
「捨てる気だったんだろう?」
再び瓶を見せながら尋ねる俺に、風が顔を上げて涙の浮かんだ目で言った
「だって!これはあの時の嫌な…」
そう言ってまた俯いた風の顔を両手でその頬を挟んで上げさせる。
「これな、使い方によっちゃあ、この世の地獄にも天国にもいけるんだよ…今度は天国に連れて行ってやるから、捨てるなよ。まぁ、それでも嫌なら捨ててもいいけどさ…風に任せるわ。」
そう言ってサイドテーブルに置くと、風の視線がそれを追って、俺に抱きつき言った。
「雷とだったらいつも天国だよ。」
「マジで煽りが上手くなったな、風。…いいぜ、一緒に天国に行こう。」
「雷!!」
そう言って風の首筋に噛み付くようにキスをした。
「んっ!んーーーー!」
ググッと大きく伸びをしてベッドの隣を見ると、寝ているはずの風の姿がない。
耳をそば立てると、キッチンの方から水と笑い合い、朝食の準備をする音がした。
ふっと笑みが溢れたすぐ後で、例の瓶を探すが、置いたはずのサイドテーブルにはない。
やっぱり捨てたか?と、ゴミ箱を見てもそこにもない。
まさかと、入れておいたサイドテーブルの引き出しを開けるとそこにそれはちょこんと置かれていた。
ふぅん…
にやける顔を直しながらキッチンに向かう。
「お早う、雷!」
水と風がこちらを見て挨拶してくれる。
「あぁ、お早う。今朝は何だ?」
そう言って、自然に風に近付き腰を抱く。
「今朝はねぇ…」
水がメニューを言うのを空返事しながら、風にだけわかるように瓶を見せた。
「捨てなかったんだな?」
耳元で囁くと風が顔を真っ赤にしながら俺に答えた。
「天国、雷とだったらどこまでいけるのか…見てみたいから…」
「俺も。お前とどこまでいけるのか、試したい…いいんだな?」
こくんと頷く風を今すぐ抱き上げて部屋に篭りたいのを我慢して、首筋にキスをする。
「もうっ!二人共、いい加減離れてよね!ほら、陸!さっさと雷をリビングに連れて行って!!」
今、扉を開けて入ってきた陸が、いきなり水に命令され、訳もわからずに俺をリビングに連れて行く。
「お前、水に敷かれてんな。」
そう言って笑う俺に、だって雷もだろ!と言われ、そうだなと二人で笑い合った。
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