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出られない部屋
「んんん…」
伸びをして隣を見る。
すやすやと幸せそうに寝ている風の顔を見て微笑むと、ベッドから降りて扉のノブに手をかけた。
かちゃ…かちゃかちゃ…
え?!
ノブが壊れてる?
おいおい、部屋から出られないのかよ?
もう一度、ノブを回してみるがやはり空回りするだけ。
体当たりしてみるか…?
すーっと息を吸って体当たりする直前、部屋に響き渡るチャイムの音。
ピンポンパンポーン
はぁ?こんなスピーカーなんてなかったよなぁ?この部屋に…
「扉に体当たりしてもこの扉は壊れませーん!」
アホみたいな陸の声が聞こえてきた。
「この部屋から出るには、風には一切手を出さずに、風を満足させてあげてください…って、陸が言ってよ…恥ずかしいなぁ。」
水の声も聞こえてきた。
「あのなぁ、お前ら… ふざけてないで、さっさとここから出せ!」
「ダーメ!!風が満足したら出られるから頑張って!でも、雷が手を出したら、ずーっとここにいることになっちゃうから、気を付けて!じゃーね!」
パチンと音が鳴り、二人の声が聞こえなくなった。
シンと静かになった部屋の中、後ろを振り返ると風が微笑んでこちらを見て手招きしていた。
はぁ
ため息をついてベッドに向かい、その端に座る。
「どう言う事だ?」
「聞いた通りだよ。僕には手を出さないで、僕を満足させて?」
「手が出せないのに?」
「僕に雷がさせたい事、したい事を命令してくれればいいんだよ。それで僕が満足すれば、雷はここから出られるってわけ。」
俺の胸を弄っていた風が俺の上に跨り仰向けに俺を押し倒す。
「お前に押し倒されるなんて初めてだな。」
「どう?抱きたくなる?」
「あぁ、いいな。」
「もう!ダメだよ!僕に手を出したら、この部屋から出られなくなるって言われたでしょ?!」
そう言って、風が俺の唇に自分の唇を合わせる。
だが、何もしないままでいる風に唇を離そうとすると、ダメと言って俺の頭を抱き寄せた。
そう言えば、命令しろって言ってたな…
風の言葉を思い出し、だったらと思い言ってみた。
「舌、出せよ。」
俺の言葉にそうだよとでも言うように頷くと、風が舌をぺろっと出した。
「俺がいつもやってるみたいに、舌を絡めてみろ。」
いつもの風なら絶対にしないはずなのに、躊躇うことなく俺と自分の舌を絡め、唾液を絡ませいやらしい音を出し始めた。
おいおい、マジかよ…
「なぁ、風。キスはもういいから俺の指舐めろ。」
差し出した指を見ると、頷いて両手で掴み、俺を見上げながらピチャピチャと音を立てて俺を煽るように一本一本いやらしく舐める。
「なぁ?この指を俺がどうしたいか分かるか?」
とろんとした目で俺を見つめたままこくんと頷くと俺の指を口から離し、俺に背中を向けた。
「でも…僕、雷に言って欲しいな。」
振り向いて俺の指を口に含み、丸くてふわふわのしっぽと、その下にあるいやらしい穴を見せつけるように腰を動かす。
「お前のそのいやらしく俺を誘う穴に、俺の指を突っ込め!」
俺の言葉を聞くとぞくんと体を震わせて、言われた通りにゆっくりと俺の指を俺を受け入れる穴に近付け、ぬぷっと音を立てて入れた。
「やっぱりな…これは夢だろう?俺が言う前から俺のして欲しいことがわかっているなんて、夢じゃなきゃおかしいもんな。」
ぐちゅぐちゅと音を立てて俺の手首を掴んで上下させて甘い声を響かせている風がそうだよと妖しく微笑んだ。
「僕は…雷の理想の…風だよ。雷がして欲しい事を…してあげる風。だから…雷が何をしたいのか…僕には全部…分かるんだよ。」
喘ぎ声を混じらせながら、甘い声で話す風に、だったら手を出してもいいんじゃねぇのか?と、風の手を外そうとするのをグッと両手で押さえつけられた。
「ダーメ!いくら雷の夢でも、今は僕が支配してるの!だから僕の言ったようにしないと、いつまでもここから出られないよ!」
そう言って、穴に入れる俺の指を増やしていく。
「はぁあああっ!ねぇ、もっと…もっと奥に…雷ので…欲しいよぉ!」
風だったらこんな事、絶対にしないし言わないよなぁ。
雷のバカ!エッチ!
風が真っ赤になった顔で頬を膨らませて怒る姿が頭をよぎった。
こんな事を俺が風にさせたいなんて知られたら、風に一週間は口をきいてもらえないだろうな…
でも、ここを支配しているとか言う風自身がして欲しいって言ってるんだし…ここでなら、いいよな?
「手出しできないんだからさ、お前の口で俺の準備しろよ。」
「夢だってわかった途端に、強気な言葉になるんだね?現実の風にもそう言ってやらせればいいのに…でも、だから僕が生まれた…ふふっ。僕しか知らない雷の姿…現実の風が知ったらどう思うんだろうねぇ?」
ニヤリと笑う風にチッと舌打ちする。
「やんねぇのかよ?」
風の顔の前にある腰を突き出すと、しないわけないでしょ?と言って、ぱくんと口に咥えた。
「…っ!お前、少しは戸惑うとかしろよ…って、俺のいいところばっか…責めるんじゃ…くそっ!」
流石に俺の夢の中の風だけあって、ピンポイントで俺のいいところばかり責め立てられ、危うくイきそうになるのをプライドで止めた。
「ほら、お前が自分で跨って挿れろ!あぁ、背中を向けたままで…そう、挿入っていく所が見えるように、そうゆっくり…ん…いいぞ…おい、まだ動くなって!」
「ふふ。まるで僕が入れてるみたいな事を言うんだね…ぁああっ!雷のが僕の奥まで届いて…んんん…ねぇ、動いて…いい?もう…我慢…できないよぉ!」
いいと言う前から、動いてんだろうが!
パチンと俺の前で揺れる双丘を叩きたくなる手を我慢して引っ込めると、頷いた。
「動け!」
風の腰がリズミカルに俺の上で踊り、段々と昇りつめていくのが分かる。
髪を振り乱し、息を荒げ、甘い声で俺を煽る風に我慢できず、俺も腰を風の腰に合わせて動かす。
「ずぅ…るいぃいい!手ぇ、出し…ったらダメェ!んんん…ぁあああああっ!」
「だから、手は出してねぇだろ!出してんのは腰だけだ…って!」
どんどん激しくなっていく二人の腰がぶつかり合って出る音が部屋に響き渡り、風の甘い声と俺の唸るような声が混ざり合って、ついに風が大きくのけぞってから、ガクンと俺の足の上にうつ伏せに倒れ込んだ。
俺も風の中を熱くドロドロの液体で満たして荒い息をつく。
ぬぷっと言う音と共に風の中から俺が離れ、風が俺の胸に顔を埋めた。
「もう、いいのか?」
髪を撫でながら尋ねると、こくんと頷く。
「そろそろ帰してあげないと、現実の風が心配しちゃうからさ…最初の約束通り、僕もイったしね。でも、雷?雷はもっと風にしたい事したらいいと思うよ?だって、それをやった僕はこんなにも気持ちよくて幸せなんだから…きっと現実の風も気持ちよくて幸せになれると思うよ…ただ、少しはこっちの僕のことも相手にしてくれたら嬉しいんだけど…」
「あぁ、考えておくよ…あと、アドバイスもありがとな…風。」
キスしようとする俺に風が手でダメと腕を交差する。
「まだ、ここから出られていないでしょ?雷が手を出したら、ここにずっといることになっちゃうんだよ?いいの?」
「あぁ、そうだったな。だったら…風、俺にキスをしてくれ…それで俺はここから出る…いいな?」
うんと頷いた風の顔が近付き、一瞬唇が合った瞬間、俺はベッドで目を開けた。
部屋の中はまだ暗く、隣では風がすやすやと幸せそうに眠っている。
ふと触れた唇についた雫を指で拭って舐めるとしょっぱい味がした。
ベッドを降り、水を飲むために扉に向かう。
ドアノブに手をかけ、一瞬躊躇いながらもそっと回すと、かちゃっと音がして扉がいつも通りに開いた。
「風、またな…」
呟いて廊下に出ると扉を閉め、暗い廊下を歩き出した。
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