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風と月-2

いつもの木の実採りのはずだった。 だが、水といつも行く採取場所は、今朝に限って小さな動物達が朝食の真っ最中で、邪魔をするのは可哀想だし新しい採取場所を見つけるのもいいかもと、少し森の奥深くに二人で入った。 太陽は明るくその暖かい光で僕達の行き先を照らしてくれていた。 しかし、あまり木の実のある場所はなく、二人でがっかりしながら帰路についた。 そんな時、天気はいいのに,突如土砂降りの雨が降り、僕と水は走って大きな木の根元にたどり着いた。 「少しここで雨宿りをしていこう。」 僕の提案にうんと頷いた水が、しばらくは僕の隣で天を見上げたり、陸とのことを話してくれたりしていたが、思いのほかやまない雨につまらなくなったのか、木の周りをぐるっと一回りしてくると言って歩き出した。 僕らを雨宿りさせてくれた木は本当に大きくて太くて、1/4行けば、その姿は完全に見えなくなるほどだった。 「気をつけてね!」 そう声をかけるとはーい!と素直で明るい返事が返ってくる。 水も陸も本当にいい子達に育ってくれたなぁ。 あの日、二人が箱の中に入った状態でうちに来た日。あの時は本当にただただ可愛くて、それに雷との子供が産めない僕へのギフトのような気がして、育てたいと雷に無理を承知で言った。初めこそは大反対だった雷も、人狼の二人を人間の村に置いていくわけにも、ましてやあの頃は二人とも逃走していた自分たちの村に近付くこともできず、結局は雷が折れる形で二人を育てることになった。 あれから色々なことが起こり、それらを乗り越えて僕達は胸を張って最高の家族だと言える今を手に入れた。 「長いようで短かったな。」 今までのことを振り返ると、まるで一瞬の出来事。 これから先、どれくらい皆で暮らせるんだろうか? そんなことを考えてしまい、少し胸が苦しくなる。 「まだまだ先の事なのに、バカだな。」 今があまりにも幸せで楽しくて、だから思う。この生活が永遠に続けばいいのに…。 「俺もそう思うよ、風。」 「え?雷、どうしてここにいるの?」 いきなり目の前に現れた雷に、驚きの声で尋ねた。 「風達があまりにも遅いから、陸に頼まれてな。水はもう陸と一緒に帰ったよ…なぁ、二人で少し散歩をしないか?雨の中の散歩…どうかな?」 いつもは明るい雷の、雨の中で見る少し陰のある感じにドキッとしながら、こくんと頷いた。 「久しぶりの二人きりのデートだね?いいよ。」 そう言った僕に嬉しそうに微笑む雷が本当にかっこよくて、何十年も一緒にいるはずなのに顔が赤くなってしまった僕は焦ってそれを隠すように俯いた。 「風、どうした?」 俯いたままの僕の顔を覗き込んでくる雷の顔を手で押さえると、雷の唇が僕の手のひらに当たり、そのまま舌で舐められた。 「ひゃあ!雷の意地悪!」 僕が手を引っ込めようとするが、雷の手がぎゅっと掴んでそのまま僕の指を一本ずつ咥え出した。舌で舐められ、唾液と絡まって淫靡な音を出す雷に、僕の体は力が抜けて膝から崩れ落ちそうになる。それをもう片方の手が腰に回って引き寄せるようにしながら支えてくれた。 「これじゃあ、歩けないな…」 そう言ってふっと笑う雷に、今度は危うく腰が砕けそうになるのをなんとか我慢した僕だったが、結局は雷の唇が僕のと合わさり、絡む舌に僕の最後の力を全て吸収されて全ての体の力が抜けた僕は、歩くことはおろか立つことすらできなくなった為、雷に抱き上げられて雨宿りしていた木を後にした。

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