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水の不満−2

その日の夜、皆がまだ談笑している中をそっと抜け出して部屋に向かう。パジャマに着替えてさっさとベッドに潜り込むと、パタパタと軽い足音が聞こえてきて、僕はかけてある布を頭まで持ち上げた。 バタンと乱暴に開いた扉。同じ音が響いて、足音が近付いて来る。 「なぁ、水ってば…具合悪いのか?なぁ?どうしたんだよ?」 本人は軽く揺すっているつもりなんだろうけれど、寝返りを打てるほどの強い力が僕の体にかかる。 「今日は、眠いんだ…おやすみ。」 それだけ言って、頭のてっぺんまで布を持ち上げると陸がわかったよとぶっきらぼうな声で言って、ベッドから離れていった。 少しかわいそうだったかなと思うが、昼のことやそれ以外の諸々のことが頭をよぎり、これでいいんだと自分に言い聞かせるように目をぎゅっとつぶった。 どれくらいの時間が経ったのだろうか。 目を瞑っている間に、いつの間にか寝ていたらしい僕が目を覚ますと、部屋は寝始めた時と同じく真っ暗でまだ夜だということが分かる。だが、いつもはベッドをその寝相の悪さで圧迫してくる陸の姿はない。 どうしたんだろう? 無理矢理部屋から追い出した後ろめたさもあり、陸への不満でいっぱいだった心に隙間風が吹き込むように心配な気持ちがいつの間にか顔を出してきた。 どこにいるのかな? 雷達…の所はないか… 今夜も二人はきっと… 昼に見た二人のキスを思い出し、胸が騒つく。 もし僕が風よりも早く黒兎として生まれていたら… 馬鹿なことだと思っても、風の事が、雷にあんな風に愛されている風の事が羨ましくてたまらない。 僕の親みたいなものなのに…でも、やっぱり親じゃない…だったら僕でも雷と…でも風を悲しませたくない…それにやっぱり二人は僕にとって大事な家族で親だもん。 …でも、やっぱり… ぐるぐると答えの出ない考え事をしながら、部屋の扉の前でノブに手をかけたままで立ち止まっていると、カタンとリビングの方から音がした。 考えるよりも先に部屋を飛び出してリビングに走ると、いつもは雷が寝っ転がって独り占めしているソファにこんもりとした布がかかっている。 あぁ、陸があそこで寝ているのか… 居場所がわかってホッとした気持ちになると再び陸への不満が心を占め、僕はそっと部屋に戻ろうとした。 しかし、くるっと振り返ろうとした瞬間、陸にかかっていた布がはらりと床に落ち、露出した下半身が見えてしまった。 「え?」 本人はとっくにすっきりとした顔で寝息を立てているが、朝になってこんな状況の陸を風が見たら…いや、ダメだ。 陸には不満だらけだけれどもこんな恥ずかしい姿を他の、たとえそれが風や雷であっても見せるわけにはいかない。 それこそ、パートナーである僕の責任だ… 「はあああああああああ、もう!」 深く大きいため息をついた僕は、仕方なくリビングの扉を開けた。

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