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水の不満−4
「やだぁああああああっ!」
ガバッと起き上がった僕の体に優しい手が伸び、再びベッドに寝かされる。
「風?」
見なくても分かる…心配している泣きそうな顔が思い浮かぶ。
「大丈夫?」
横を向いてこくんと頷く僕の震える背中を、風は何も言わずにそっと撫で続けてくれた。
それが気持ち良くて、嬉しくて、でも辛くて、頬を温かい筋が何本も流れていく。
「風、ごめんね…」
「うん…」
何も言わず、何も聞かず、それでも風には僕の幼い雷への恋心がバレていたんだと分かる。
「水は陸が嫌い?」
風には珍しい直接的な質問に、頭をブンブンと振る。
「嫌いじゃない!…ただ、この前会った波おじさん…って言ったら怒られるか…波さんと静さんとか…風と雷とか見てるとすごく羨ましくて。雷も静さんも大人でカッコよくて、頼もしくて、いいなって…」
「んー、静は分かるけど…雷は水達が知らないだけでまだまだ子供だよ?」
くすくすと笑いながら答える風に、その余裕も僕にはないんだと答えた。
「愛されているのは水も一緒でしょ?」
「違う。陸と僕は…互いしかいなかったからこうなっただけだ。風と雷みたいに探し当てた運命の相手でもないし、波さんや静さんみたいに選べる相手がどんなにいてもこの人しかいないっていうのとも違う。もし僕達が僕達以外にも仲間がいっぱいいるところで暮らしていたら、僕は陸とこういう関係になっていたのかわからない。」
胸の内をボソボソと喋り続ける僕を黙ったままで聞いていた風が、手を背中から離して立ち上がった。
「それはそうかも知れない。でも、やっぱり陸とこういう関係になっていたかもしれない。でもね、どんな状況でも相手に会って、その相手を受け入れるっていう行為はやっぱり特別だと思うんだ。たとえ目の前にその人しかいなくても、受け入れられない相手はやっぱり受け入れられないよ。いろいろな事があって心が変われば受け入れられないと思っていた相手も受け入れられるようになるかもしれない。でも、それも二人の運命だと僕は思うよ。それに、雷も静も水が思っているほど大人じゃないよ。陸はあんなしっかりとした人の子供かもしれないんだ。あと数年もしたら、家で一番冷静で格好良い大人になる可能性だってあるんだよ?水が陸のハンドルをうまく握って、自分好みにする事だってできるんじゃないの?」
ふふっと笑いながら、風が扉に向かって行く。
「風もそうしたの?」
投げかけた僕の問いに背中を向けたままで扉を閉めながら、水が惚れちゃうほどにはねと笑いながら言って扉の向こうに姿を消した。
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