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結婚式ー3
「長ーい、着替えだったねぇ?」
二人でリビングに入った途端に波が思った通りの反応。
「あ、コーヒーいるでしょ?雷は座ってて。」
赤い顔を隠すように俯きそそくさと台所に消える風に言われた通り、いつものソファの席に座る。
テーブルから移動して俺の前の椅子に座った波がニヤニヤしながら、俺を見つめてきた。
「何だよ?!」
「本当に引きこもっちゃうなんてさ…風も雷もえっち!」
「何だそれ?お前が何時間でもどうぞって煽ったんだろうが?」
ケラケラと笑う波にため息が出る。こいつはなんと言うか、風と兄弟とは思えないくらいにあっけらかんとしていて無邪気でタチが悪い。
「顔は似てるんだけどな…」
「じゃあ、僕で一度試さない?」
「試さねぇよ!大体、結婚すんだろう?あの静とかいう奴と。」
俺の言葉にうんと大きく頷く。
「だからその前に一回だけ、ねっ!」
「だから、お前は趣味じゃねぇの!あと、俺達は式には行かねぇ。」
どうぞと風の運んできたカップを手に取り一口啜る。
「えー?!俺は行きたい!!何で行っちゃダメなんだよ!?」
波よりも先に陸がテーブルから駆け寄って来ると波の隣に座って、俺に噛み付いてくる。
「当たり前だろう?風を村から奪い取った男だぞ、俺は。風の家族が波のように許してくれたとしても、村の連中が全員そうだとは限らねぇ。せっかくの祝いの席を潰すようなことはしたくねぇんだよ。」
「雷…僕も我慢する!波のきれいな姿が見られないのは残念だけどさ。でも、心でいっぱいお祝いしてるから。ね、陸も分かった?」
水に言われた陸が口を尖らして、それでも渋々頷く。
「俺だって波のきれいな格好見たいけど、辛い思いをする波を見るのも、雷や風が嫌な思いをしているのを見るのも嫌だ…だから、我慢する。」
「お前達…」
つい目頭が熱くなってしまう。2人とも少し前なら駄々をこねて泣き喚いていたはずだ。それが俺や風の事まで考えて我慢すると言う…成長してるんだなと思うと感慨深い。
「もうっ!そんな風に言われたら、無理強いする僕が聞き分けのない子供みたいじゃないか!?…分かったよ!式には呼ばない…でも、絶対に皆に祝ってもらうからね!」
「波…ごめんね。」
風が俯いたままで波に謝る。
肩を抱き寄せて、風の顔を胸に埋めさせる。
「全ては俺が金狼として黒兎の風に会ったことが発端だ。すまない。」
頭を下げる俺に波がグッと声を詰まらせる。
「もういいよ!静!いるんだろう?」
窓が開いていつも通りのガタイのいいウサギが1匹飛び込んで来る。
「お前さぁ、玄関から入ってくるか、波と一緒に来るかしろよ。心臓に悪い。」
俺の呆れた声にはぁと気のない声で答え、波を抱き上げる。
「もう帰っちゃうの?」
陸の言葉に頷いて準備しなくちゃいけないからねと言い残し、二人はやっぱり窓から去って行った。
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