67 / 90

結婚式-11

「なぁ、風?」 風の衣装を脱がせつつ、ベッドに横たえながら話しかける俺の衣装の紐を風が解きながら、何?と首を傾げる。 「俺も俺の夢ってやつを叶えたいんだけど…」 「雷の夢?」 「そう。俺もさ俺の村の式をやりたいんだよな…風なら俺の夢、叶えてくれるだろう?」 「雷の村の結婚式?…え?むりむり!」 風が上半身を起こして顔の前で両手を振りながらベッドの端の方にずり上がっていく。 「何でだよ?俺は風の夢を叶えてやっただろう?だったら、風も俺の夢を叶えてくれよ。」 俺が四つん這いになって近付いて行くと、風がベッドからおりて逃げようとする。その腕を寸手で掴んでベッドに戻し、その上に馬乗りになった。 「だって、い…一週間…だよね?ずっと…そんなの…僕…」 真っ赤な顔で俺から視線を逸らすように横を向いて呟く風の、いつもは隠れている兎の耳に口を近付けて舌で舐めた。 「やぁっ!だめ…ってばぁ…舐めな…んっ!だめぇ…」 「なぁ、いいって言わないと次は尻尾を噛むぞ?」 風の急所で性感帯の丸くてふわふわのしっぽがぴくっと動き震え出す。 「やめ…て…」 「だったら、俺の夢も叶えてくれるだろう?ん?」 言いながら、片手で風の両手首を捕まえたまま、空いている手で風の耳を擦り、その穴の中に指を入れてくすぐった。 「ひゃあぁっ!やだぁ!雷…耳…っなかは、だ…あぁっ!めぇ…っくぅん…」 「答えないならしっぽに…」 俺の手が耳を離してしっぽに向かいそうになるのを見た風が、必死に腰を捩って逃げようとする。 ったく…だから、そんな腰の動きされたら我慢できなくなるっつーの! 自分では全くわからずにやっているのだろうが、俺を煽るようなその腰の動きにごくりと喉が鳴り、絶対に落としてやると心の中で強く決心をして口を開いた。 「なぁ…お前は俺を幸福にしたいって、それが黒兎の願いだって言ったよな?だったら、俺の夢を叶えることはそれに当てはまることだろう?」 「それはそうだけど…でも、一週間も…ずっとなんて…」 まだ、落ちないか…だったら… 「あのさ、本当だったら金狼が迎えに行った黒兎はどうなるんだ?」 「えっと、金狼の村に連れて行かれてそこか、その近くで二人で暮らしたって聞いたよ。」 俺の言いたい事がわからずに、なんとか俺の考えを読もうと風がじっと俺を見つめる。 「だったら、黒兎は金狼の元に迎え入れられて暮らしてきたってわけだよな?」 「そういうことになると思う…あっ!」 何かに気がついたようにしまったと言う顔をして風の顔が青ざめ、俺を見る。 「だよなぁ?金狼の元に来て、金狼の村のしきたりの中で暮らしてきたなら、それまで金狼に迎え入れられて来た黒兎達は皆、狼の村の式をしてきたって事だよな?」 「…それは…でもっ!僕にはムリだよ!雷、僕らには陸や水がいて、ここは狼の村ではないんだから…」 「兎の村でも、ないよな?」 「うぅ…」 うろたえた風が目に涙を浮かべて首を振る。 「許し…て…雷…お願い…」 その涙を舌で舐めると、扉に向かって大声を出した。 「陸!水!」 風が驚いた顔で俺を見上げるが、俺はそれを無視して二人が扉の前に来るのを待った。 暫くしてバタバタと足音が近付き、扉の前で止まる。 「何?」 扉越しに声をかけてきた二人に向かって、俺が口を開いた。 「これから俺と風は狼の村の式を挙げる事にした。俺の言いたい事は、分かるな?」 「狼の?…あぁ、うん!じゃあ、僕達はどうすればいい?」 水が俺の言いたい事を読み取って話をする。 「お前達はもし迷惑でなければ兎の村に行ってろ!あとはこっちでなんとかする。」 「雷!やだってば!やだ!雷っ!」 風が俺の下で声を上げるが、その口を手で塞いだ。 「やだはきかねぇよ。俺の夢なんだから、どんな事をしても叶えさせてもらう。」 ぐるると唸り声と共に風を威嚇すると、風がぎゅっと目を瞑って静かになった。 「ちょっと!何?狼の式って。」 扉の向こうから波の声が聞こえてきた。 あのねと水が説明していると思われる声も聞こえてくる。 「えぇっ?一週間も?それ、いいなぁ。ねぇ、静?せっかくだから僕達もしない?狼流の結婚式。」 「波様がしたいのであれば…」 「もうっ!波でいいんだってば!僕はもう静のモノになったんだよ?だから、僕を静の好きなように躾けて欲しいな…」 「ならば…波。私と共に。」 「うん!」 静が波を抱き上げたのだろう。二人の足音が一つになってそのまま玄関を出ていった。 「それでは、ワタクシ達はもう少しお祝いをさせて頂いて、その間に陸様と水様のお二人は準備をなさって?雷様、お食事は置いていきますので、ごゆっくり。お二人は後ほどご連絡を下さればこちらでお送りしますので…」 いつの間にか扉の前に来ていた夏の奥方の申し出にありがとうと言うと、それではと言う言葉を残して、皆が扉から離れて行った。 しんとした静けさの戻った部屋の中でふと下を見ると、風が俺の手で口を塞がれたまま真っ赤な顔でこちらを睨んでいる。 ゆっくりと手をどかすと、風が何回か大きく呼吸をした。 「悪い。苦しかったか?」 「…勝手だ…」 「ん?」 風が何かを言ったがあまり聞き取れなくて聞き返す。 「雷も波も、陸も水も皆して僕の言う事を聞かないで…僕は嫌だって言ってるのに!」 涙でぐちゃぐちゃになった顔で大声を上げる風に笑いが込み上げてくる。 「なんで笑うの?僕は怒っているんだよ!」 でもなぁと俺が風の涙をそばにある布で拭き取りながら話す。 「こんな事、式を挙げた時にしかできない事だぞ?本当に、したくないのか?」 俺と目が合った風の顔が見る間に真っ赤になっていく。 「いい思い出にもなるし、お前のことだけを考えていられる一週間なんて贅沢すぎだろ!俺はこの機会を絶対に逃したくはないんだ。」 俺の言葉に風がもう!と横を向きながら答えた。 「そんな風に言われたら…僕だって…。無理…じゃないと思う…雷となら…」 蚊の鳴くような声でそれだけ言うと、風の顔だけではなく、体までもが真っ赤に染まっていく。 「ありがとな、風。出来る限り無理はしないようにするから…でもさ…体は正直だよなぁ。」 俺の笑いを含んだ言葉に風が何?と俺を見た。 「イヤダイヤダって言ってた割にはしっかりと反応してるんだよな…風のここ!」 伸ばした手が風の下半身に触れると、風がびくんと腰を浮かせた。 「ひゃっ!」 「ふっ…これで嫌だって言われてもな…まぁ、いいさ。上の口でも俺が欲しいってすぐに言わせてやっから、覚悟すんだな!」 ぐっと握った俺の手の中で、風の体温が熱くなっていくのを感じた。

ともだちにシェアしよう!