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結婚式-18

「あ…風、話してもいいか?」 「え?!」 風が波や夏達と談笑しているのを、ぼーっと眺めていたが、フッと思い出して風に声をかけた。 「例の黒兎の事…いいか?」 あぁと言うように風が頷いて、波と夏に向き直った。 「あのね、黒兎のことを金狼の村にも伝えたいって雷が言ってて…どうかな?」 「反対です!」 背中から声が飛んできて、驚き振り返ると静が俺を睨むようにしながら立ち上がっていた。 「何でだ?」 俺も負けじと声を荒げて立ち上がる。 「考えてもみて下さい。兎は所詮兎です。あなた方狼に居場所がわかれば襲われるリスクが増えるんです。だから、兎は辺境の地に身を隠して住んでいるんです。それをわざわざ教えるようなこと、私は村を守護する者として絶対に反対します。」 「今時、兎を食べなんかしねぇよ!」 「今はそうかも知れません。だが、この先は?私達の軽はずみな行為が将来の兎の村の破滅を招くかも知れない。」 「そう言われると…んー、困ったな。」 夏が俺と静の間に入り、唸り合う俺達を宥めるように波と風に視線を投げた。 「静、まずは話を聞こう?風も困ってるしさ。」 「…波がそう言うなら…」 立ち上がった静が椅子に座る。それを見て風も俺に視線を投げて来た。 「分かったよ!」 ドスンとソファに座ると、風が俺の隣に座って手を握って来た。 「あのね、僕も雷に言われて色々と考えたんだ。僕達は特にしばらく金狼が生まれなかったから分からないことだらけで、様々な行き違いやなんかから色々と悲しいことがあったでしょう?二人ともこうやって話せず逃げ回ったりしてさ。」 そうだねと波と夏の二人が頷いた。 「だから、そう言う悲しいことをなくしたいって思ったんだ。でも、静の言うこともよく分かるよ?だからさ、村の場所を隠して兎というのも隠して…」 「それでどうやって探すんだよ?」 俺が我慢できずに口を出した。 「だからね、どんな種族を連れて来ても受け入れることって言うのと金狼は生まれてその状況になったら運命の相手を探しに行くことっていう感じで伝えたらどうかなって思ったんだけど…ダメかな?」 風が俺を見上げるように言う。 …ったく、俺がその顔に弱いって知っててやってやがるよな… はぁとため息をついて風の頬をムニッとつねる。 「いたぁい!もうっ!!」 頬を膨らまして横を向く風にどうやって探し出すんだよと首に口を近づけて訊ねる。 「もうっ!くすぐったいってば!!だって、雷は僕のことを何のヒントもなく探し出せたんでしょ?」 「まぁ…な。」 それにねと言って風が静達を見た。 「黒兎はその一生を金狼が来るのを一人きりで待たなければいけない。それは本当に寂しくて辛くて…皆がそれぞれに愛する人や家族ができても、まるで取り残されたかのようにずっと一人で待ち続ける…僕もそうなんだろうってずっと思ってた。」 皆が声を詰まらせる音が部屋に響く。 「だから、黒兎である僕もこの幸せを全ての黒兎に知ってもらいたいんだ。その為にはどうしても狼の村にこの事を伝えていかなければいけない。だからどうか許して欲しい。」 「俺からも頼む。金狼としての幸せも心の安定も黒兎と出会わなければ得られないものだ。俺も他の金狼達にそれを知ってもらいたいんだ。」 シンと静まり返った部屋。時計の音だけが時間の流れを意識させる。 「いいんじゃないですか?」 突如、夏が口を開いた。 「え?!」 俺と風が同時に声を出す。 「静も…いいだろう?」 夏の言葉に兎のことを隠すと言う条件付きならと言って首を縦に振った。 「良かったね、風!雷も!」 波が風に抱きつくと、風も目に涙を浮かべて頷いた。 「あとは、俺の方か…」 口に出した言葉に風が心配そうな目を向けるが、なんとかなるさと言ってにっと笑った。

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