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里帰り-1
「はぁ」
トコトコと一人で歩く村への道。
気の重さが歩く速さに出ている。
「大丈夫だよ。心配するな!行ってくる!」
手を振って堪えきれない涙を流しながら、水と陸に両腕を持たれて引きずられるように家の中に入っていった風。
大声で何度も俺の名を呼んで……
「はぁ、帰りてぇ。」
一瞬止まりそうになった足を、ここで止めたら絶対に回れ右して、今来た道をそれこそ秒の速さで戻って風を抱き締めてそのまま……
「あぁ!!くそっ!!」
銀狼の姿で風達から見えるところまでは意気揚々と駆けてみせたが、見えないと確実に思われるところまで来てみると、途端に足はゆっくりとなり、ついには銀狼化しているのが馬鹿馬鹿しいほどのノロノロ歩きとなった。
咥えていた服を着て人と同じように歩く。ただ歩いている場所は人などの絶対に通らぬ山の獣道。
そこを何の躊躇もなく歩く。
「確かに銀狼の村に言いに行かなきゃなんねぇし、風や水はもちろん、陸だって連れて行くわけにはいかねぇ。かと言って村から光を来させたらやっぱり風がなぁ……はぁ。」
今更だと分かっていても、何とか風から離れずにいる方法はないものかと頭をひねる。
「さっさと行ってさっさと帰ってくればいいだけじゃん!雷なら往復に一日もいらないだろ?」
陸の間の抜けた声が頭をよぎる。
まったくあいつは……いくら俺だって、村まで行くのに半日以上はかかるってーの!
しかもこのノロノロ歩きじゃ、一体いつになったら着くんだか。
はぁとため息を吐きそうになった耳に早く帰って来てね!と言う風の声が通り過ぎて行く。
「風?!」
空耳だと分かっていてもついその声の主を探してしまう。
だが、キョロキョロと見回しても自分の他には小動物1匹もいない山道。
「いるはず……ないよな……」
再び項垂れた頭を突如グイッと持ち上げると、まるで自身を鼓舞するかのように大声を上げた。
「風!!すぐに帰るからな!!待ってろよ!!!」
まるでその声に応えるように雷の耳を柔らかな風がくすぐっていった。
「よし!今夜中に帰って風を抱き潰してやる!!」
山中に轟くような大声でそう言うと、人型だった体はふっと服の中に消え去り、モゾモゾと出て来た銀色の狼が脱いだ服を咥えてブルンと体を一振りすると、まるで風のように山道を駆けて行った。
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