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第8話

「ただいま!」 玄関を開けると、大喜びで出迎える愛犬・ティアラを撫でている良の耳に、 部屋の奥から聞き慣れた、けれど今ここにいるはずのない人物の声が届いた。 「良、おかえり!」 振り返ると、入院しているはずの兄の姿が目に飛び込んできた。 「兄さん!!!」 突然のことに、良は驚きの声を上げる。 「病院はもういいの!?」 「お陰様で、今日無事に退院できたよ。まだ車椅子だけどな」 右足にギプスをつけ、ぎこちなく車椅子を動かしながら、兄は穏やかに笑った。 「そっか。本当に良かった!」 良も、ほっとしたように笑う。 「これから親父と、仕事の件で打ち合わせがあって帰ってきたんだ」 兄は良より6歳年上で、すでに実家を出て父の会社で働いている。 「そっか」 「良……」 「うん?」 「俺のせいで、日本に引き戻すことになって……本当にすまなかった」 兄は真剣な面持ちで、良に深々と頭を下げた。 「そ、そんなことないよ!!」 良は慌てて首を横に振る。 「今まで家のこと、全部兄さんたちに任せきりだったし。俺にできることがあれば、何でもするから」 そう言って、良は満面の笑みを浮かべた。 「ありがとう」 兄は微笑むと、ふと良の顔を覗き込んだ。 「良。学校生活は、うまくいっているか?」 「えっ……うん、もちろん!」 今日の出来事が頭をよぎり、一瞬言葉に詰まった。 誤魔化すように苦笑いを浮かべ、俯きがちに答える。 「まさか、虐められてないだろうな?」 兄の眉間に、ぐっと皺が寄る。 「俺の可愛い弟を……」 「そんなことないよ!」 良は慌てて笑顔を作った。 「みんなすごく親切にしてくれるんだ! 心配いらないよ」 「そうか。それなら安心した。何かあったらいつでも言えよ」 「うん。ありがとう、兄さん」 良は笑って答えた。

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