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第9話

兄との会話を終え、良は自室へ戻った。 「はぁ〜〜〜……」 制服のままベッドに腰を下ろし、ネクタイを緩めながら深く息を吐く。 今日は、色々なことがありすぎた。 生徒会室で偶然聞いてしまった、あの会話。 『柳瀬会長を口説き落とすこと!』 あぁ、 嫌な記憶が蘇り、良は思わずベッドに倒れ込むと、枕に顔を埋めた。 「‥忘れよう。忘れよう!」 そう呟いたものの、頭から離れてくれない。 むしろ、忘れようとすればするほど、別の光景まで鮮明に蘇ってくる。 『無理はしないでくれ』 心配そうに真剣な瞳で見つめる七条。 渡り廊下で再び会った七条。 剣道着と袴姿。 少し汗ばんだ鎖骨。 『柳瀬、また明日』 そして―― 頭を撫でてくれた、大きな手。 良は慌てて頭を振った。 「なんで俺、こんなに七条のこと思い出してるんだよ!」 違う、違う……! あれは全部、罰ゲームなんだ。 七条が自分を心配してくれたことも。 優しくしてくれたことも。 頭を撫でてくれたことも。 全部―― 「……俺を口説き落とすための罰ゲームなんだろう」 そう思った瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられた。 「…………なんでだよ」 良は小さく呟いた。 けれど、自分でもその理由が分からない。

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