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第10話
その夜。
良は夢を見た。
見慣れた生徒会室。
静まり返った室内で、良は一人、七条と向かい合っていた。
「……七条?」
七条は、いつもの穏やかな笑顔を浮かべている。
「良」
「……うん?」
七条が、ゆっくりと良の元へ歩み寄る。
「俺は、お前に伝えたいことがある」
「……何?」
七条は良の目をまっすぐに見つめて、
そっと顎に手を触れた。
その瞳は、今まで見たことがないほど優しかった。
「俺は、良が好きだ」
「…………え?」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
けれど、言葉の意味を理解した途端、良の胸が大きく跳ねる。
「……俺、を?」
「あぁ」
七条は微笑んだ。
「ずっと前から、良のことが好きだった」
「…………」
嬉しい。
胸がいっぱいになって、何も言えない。
だって、自分も――
「……俺も」
やっとのことで声を絞り出す。
「俺も、七条のこと……」
七条の顔が、さらに近づく。
良は目を閉じかけた。
その瞬間――
「……ぷっ」
誰かの吹き出す声が聞こえた。
「……え?」
良が目を開ける。
いつの間にか、生徒会室には大勢の人が立っていた。
皆、こちらを見て笑っている。
「……何?」
状況が分からず、良は周囲を見回す。
すると七条が、ふっと笑った。
「柳瀬」
「……七条?」
七条は、先ほどまでの優しい表情を消していた。
「罰ゲーム、終了だ」
「…………え?」
「まさか、本気にするとは思わなかった」
「……嘘……」
良の顔から血の気が引いていく。
「嘘だろ……?」
その瞬間、生徒会室に笑い声が響き渡った。
「柳瀬会長、完全に騙されましたね!」
「七条様、見事でした!」
「こんなに簡単に落ちるなんて!」
「…………」
良は何も言えなかった。
ただ、目の前の七条を見つめる。
「……俺……」
喉が震える。
さっきまで、あんなに嬉しかったのに。
胸が、今度は引き裂かれそうなほど痛い。
「……七条」
七条は答えない。
ただ、良を見て笑っている。
あの優しい笑顔で。
その笑顔が、今は何よりも怖かった。
「……嫌だ」
気づけば、良の目から涙がこぼれていた。
「……待って」
七条が背を向ける。
「待って、七条……!」
良は必死に手を伸ばした。
けれど、その手は届かない。
「七条……!」
――そこで、良は目を覚ました。
「…………っ!」
暗い部屋の中。
荒い息を繰り返しながら、良は上半身を起こした。
「……夢……?」
胸に手を当てる。
心臓が、嫌なほど激しく鳴っている。
しばらく呆然としていた良は、やがて布団をぎゅっと握りしめた。
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