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第12話

その日から―― 良の挙動不審な日々が始まった。 七条が近くにいる。 それだけで、心臓が騒がしくなる。 ⸻ 音楽の授業時、 隣の席に座ってきた七条に―― 「……っ!!」 思わず顔が強張る。 「?」 七条がこちらを向いただけで、 ドクンッ!! 心臓が大きく跳ねた。 『な、なんで!?』 良は慌てて前を向く。 ⸻ また、ある日の生徒会室。 良が書類に目を通していると―― 「柳瀬」 「うん……?」 突然、背後から七条の声がした。 「来年度の予算額のことだが」 「え?」 七条が良の肩越しに書類を覗き込む。 「ほら。ここの金額だ」 七条の逞しく焼けた太い腕が、良の肩のすぐ横を通り過ぎる。 耳元で響く、低く落ち着いた声。 良の身体が固まった。 近い。 近すぎる。 ドクドクドクドク―― 心臓が、まるで胸の内側から叩きつけるように激しく鳴り始める。 『う、嘘だろ……』 『なんでこんなにドキドキするんだよ~~!!』 ⸻ そして―― ついに耐えきれなくなった良は、誰もいない洗面所へ駆け込んだ。 「はぁ……はぁ……」 蛇口をひねる。 勢いよく流れ出した水で、良は何度も顔を洗った。 冷たい水を拭い、鏡に映る自分と目が合う。 色白の肌に、赤く染まる頬。 そして何より―― 「…………俺」 良は鏡の中の自分をじっと見つめた。 「こんなに心が乱れるなんて……」 胸元に手を当てる。 「おかしい……」 しばらく考え込んだ末―― 良の瞳が、ぱっと見開かれた。 「もしかして……」 ごくり。 「これって……」 そして―― 「ストレス!?」 誰もいない洗面所に、良の声が虚しく響き渡った。

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