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第2話
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──今日もいつもと変わらない
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俺は 和泉 紫音 。
大学1回生で一人暮らし。
一人暮らしなのは下宿とかじゃなくて、両親が小さい頃に事故で他界したから。
でも、親の保険金で今まで生活もできてきたし、大学にまでいけた。
あとはいい成績をキープして、いい会社に受かるだけ。
…と言いたいところなんだけど、
16歳の頃だから3年前…か、
急に体に異変があって病院に駆け込んだら、
原因はなんと発情期。
俺はΩだった。
Ωは社会的地位が低いっていうのは小さい頃から聞かされてきたし、まさか自分がΩだなんて思わなかった。
それから俺は血の滲むような努力をして、なんとか国公立の大学に受かって今に至る。
このご時世、Ωというだけで社会からは除け者にされる。
だから簡単に就職ってわけにもいかないんだよなぁ…。
ま、今はとりあえず卒業することだけ考えて大学生活頑張ってる、って感じかな。
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「紫音〜!おまえ今日までのレポート終わった?あのジジイ容赦なさすぎだろ。終わるわけねーじゃん。」
そう言って愚痴を吐くのは、俺の高校からの親友、
白石 優 だ。
優はβで、俺がΩだってことも知ってる。
高校の時からずっと気にかけてくれてるし、急に発情期がきて周りにバレそうだった時もこいつのおかげでなんとかやってきた。
「おはよ、優。俺はそのレポートさっき提出してきたぞ。」
「は?!まじで?!ちょ、今からやるわ!次の講義のノート頼む!!!」
そう言って、優はノートパソコンを開き、レポートを作成し出した。
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「〜〜〜〜〜〜っと終わった!!紫音!ノートサンキュな!!!また今度なんか奢るわ!!」
90分の講義を終えて教室を出ると、レポートを終わらせた優が両手を合わせてそう言った。
「おう、俺バイトだから急ぎだから今日は帰るわ。レポートおつかれ。」
「あ、そっか。バイトも程々にしろよ?んじゃ、また明日な。」
「おう、また明日。」
いつも通り、別れの挨拶をして、俺は大学を出た。
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「お疲れ様です。」
「あ!お疲れ〜和泉くん!」
最初に挨拶してくれたのは、バイト先のマドンナとか言われてる三木 さんだ。
「和泉くん!今日バイト終わってからどこか飲みに行かない?私、いいお店見つけちゃって!」
俺も一応男だし、可愛いなーって思う。
胸も平均以上だし、見た目もイイ。
ただ、俺はΩだし、一生恋愛する気は無い。
なんか、Ωなのに誰かを幸せにするなんて、俺には無理。
「あー、すみません。今日はちょっと…」
「もぉ!和泉くんはいつもそれじゃん!たまには付き合ってよね!」
「また今度誘ってくださ………、あ、はい!今行きます!
すみません、三木さん。呼ばれてるんで、配達行ってきます。」
店長に呼ばれて、俺は配達物を持ってバイクに乗る。
「はい、和泉くん。これ3丁目の○○さんに」
「あぁ、了解です。いってきます。」
そして俺のバイトが始まった。
俺はピザの宅配でバイトをしている。
そう、いつも通り、いつも通りだったんだ、ここまでは。
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