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第10話
***
「音。」
あれから週に1度、海堂さんが顔を出すようになった。
あれ以来まだ発情期がきていないから、初めての時ほど激しいセックスはしていない。
だけど、海堂さんが満足するように俺なりに精一杯接客しているつもりだ。
「音、最近疲れてないか?」
「そんなことないですよ。」
「ほら、体が叩かれすぎて赤くなってる。」
「ンッ…、じゃあ、海堂さん、ギュってして?」
「おまえは俺の扱い方がうまくなってきたね。」
こうしてまた情事に及ぶ。
俺は客の中でも海堂さんとのセックスが1番好きだ。
気持ちいいし、セックス上手いし、何より男の俺から見てもズバ抜けて格好良い。
「音。俺のものになる気はない?」
「ぅ、、ん?海堂さんがいいならいつでも。」
「本気にしてないね。全く。」
今日みたいに穏やかなセックスも、いつもと違ってまた気持ちイイ。
こうして、また眠りについてしまった。
海堂さんはいつも眠っている俺の胸ポケットに100万ほど入れて帰っていくのだった。
***
海堂さんと会って数日後。
Rougeで接客中、俺は気を失った。
「音!………音っ!!!!」
…………ん?
佐倉の声…?
「おい、もういい。こいつは俺が連れて帰る。
もう店には出さない。いいな?」
海堂さん…?
「え、誠さん、マジすか?音が今の売り上げ半分とってるって言っても過言じゃないくらい…」
「黙れ。俺の命令に背くのか?要。」
「いえ。ご無礼なこと申し上げてすみませんでした。また別のΩ探しますよ…。」
「頼んだ。また後の報告は頼む。」
──なに?
何が起こってるの?
俺、今何してんだっけ?
状況把握する前に、俺は海堂さんに横抱きにされて拉致された。
***
──目を開けるとそこは一面ガラス張りの部屋。
外は高層ビルが立ち並んでいるが、この部屋の方が高い。
高さ的にはこの辺1番の高いマンション……
ん?マンション??
「おぅ、音。目ぇ覚ましたか。」
心地よい低音ボイス。
この声は知ってる。
海堂さんだ。
「あの、なんで俺、ここに?っていうか、ここどこ?」
「ずいぶん砕けた話し方をするんだな。おまえは酔った客にボロボロにされて意識失ってた。だから俺が連れて帰ってきた。」
なるほど。
そういえば、初めての客がグイグイ酒を飲んで、俺にいきなりブチ込んだ。
後の記憶が確かにない。
「ありがとうございます。あの、俺、店戻ります。」
そう言って立ち上がると、海堂さんがものすごい形相で睨んできた。
「おまえはもう店に出なくていい。俺の家に住め。」
「な、何言ってるんですか。俺、戻らなきゃ。」
俺が玄関に向かって一歩踏み出した、そのとき
「紫音」
ドクンッ………………
と、胸が大きく高鳴った。
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