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第11話
「紫音」
海堂さんは俺を射るように漆黒の瞳を向ける。
俺は目が離せなくて
耳から海堂さんの声が離れなくて
足がすくんで動けない。
「もう店には出るな。
ずっと俺のそばにいろ。」
その海堂さんの言葉にどういう意図が含まれてるかは分からない。
ただ、
──俺はこの人には逆らえない。
本能的にそう感じた。
***
「ほら、飯。」
あの後立ち竦んでいる俺は、海堂さんに引っ張られ、テーブルに並んだ豪勢な食事を目の前にしている。
「あ、えと、いただきます……」
「おう。」
とりあえず、この気まずい空気、どうにかしてほしい。
俺はこの雰囲気に堪え兼ね、肉を頬張った。
「なにこれ、ウマ。」
「そうか?」
「いや、美味いでしょ」
海堂さんは舌が肥えているのか?
やっぱ普通の人じゃないんだな、と思って少し笑うと、海堂さんは目を見開いて俺を凝視していた。
「………なんかついてますか?」
「いや、おまえも笑うんだなと思って」
「なんすかそれ。」
また俺が笑うと、海堂さんも少し穏やかな表情になった。
店で相手していた時とは違う、優しい表情に「嬉しい」と、そう感じた。
***
食事を終え、でっけー風呂も使わせてもらって、
まぁ今から寝るしか選択肢はない。
ないんだけど、
「海堂さん、俺、ソファで寝ます」
「どうして?」
「だって、ベッド1つしかないし」
案内された寝室には大人4人は余裕で眠れそうなキングサイズのベッドがある。
1つだけ。
「一緒に寝ればいいだろ」
海堂さんに腕を引かれ、俺の体がベッドに沈む。
「おやすみ、紫音」
そう言って海堂さんはすぐ目を閉じた。
***
──が、俺は眠れるはずもなく。
(同じベッドって……、セックスするためじゃねぇのかよ。)
αのフェロモンにあてられ、体が疼いて仕方がない。
自分で弄ろうにも、海堂さんに後ろからガッチリホールドされているため身動きも取れない。
「…………〜〜ッッ!」
時々耳にかかる息が、俺の体を熱くする。
(あぁ〜〜、寝ろ、俺!寝ろ!!!)
何度もそう自分に言い聞かせるが、体に篭った熱は一向に引く様子はない。
俺は意を決して、海堂さんと向かい合わせになるよう体を捩った。
それでも海堂さんは起きなくて、熱をどうにかしたい俺は、海堂さんの腿にソレを擦り付けた。
「…………ァッ………ァンッ」
シュッ シュッ
と布と布の擦れ合う音が静かな寝室に響く。
俺のモノはズボンにシミを作り、テントを張ってはち切れそうなくらいだ。
もう少し。
もう少しだけ。
「…イッ……………あっ」
──イク。
そう思った瞬間に体が遠のき、何かと思って顔を上げると、呆れた表情の海堂さんが俺を見つめていた。
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