11 / 32

第11話

「紫音」 海堂さんは俺を射るように漆黒の瞳を向ける。 俺は目が離せなくて 耳から海堂さんの声が離れなくて 足がすくんで動けない。 「もう店には出るな。 ずっと俺のそばにいろ。」 その海堂さんの言葉にどういう意図が含まれてるかは分からない。 ただ、 ──俺はこの人には逆らえない。 本能的にそう感じた。 *** 「ほら、飯。」 あの後立ち竦んでいる俺は、海堂さんに引っ張られ、テーブルに並んだ豪勢な食事を目の前にしている。 「あ、えと、いただきます……」 「おう。」 とりあえず、この気まずい空気、どうにかしてほしい。 俺はこの雰囲気に堪え兼ね、肉を頬張った。 「なにこれ、ウマ。」 「そうか?」 「いや、美味いでしょ」 海堂さんは舌が肥えているのか? やっぱ普通の人じゃないんだな、と思って少し笑うと、海堂さんは目を見開いて俺を凝視していた。 「………なんかついてますか?」 「いや、おまえも笑うんだなと思って」 「なんすかそれ。」 また俺が笑うと、海堂さんも少し穏やかな表情になった。 店で相手していた時とは違う、優しい表情に「嬉しい」と、そう感じた。 *** 食事を終え、でっけー風呂も使わせてもらって、 まぁ今から寝るしか選択肢はない。 ないんだけど、 「海堂さん、俺、ソファで寝ます」 「どうして?」 「だって、ベッド1つしかないし」 案内された寝室には大人4人は余裕で眠れそうなキングサイズのベッドがある。 1つだけ。 「一緒に寝ればいいだろ」 海堂さんに腕を引かれ、俺の体がベッドに沈む。 「おやすみ、紫音」 そう言って海堂さんはすぐ目を閉じた。 *** ──が、俺は眠れるはずもなく。 (同じベッドって……、セックスするためじゃねぇのかよ。) αのフェロモンにあてられ、体が疼いて仕方がない。 自分で弄ろうにも、海堂さんに後ろからガッチリホールドされているため身動きも取れない。 「…………〜〜ッッ!」 時々耳にかかる息が、俺の体を熱くする。 (あぁ〜〜、寝ろ、俺!寝ろ!!!) 何度もそう自分に言い聞かせるが、体に篭った熱は一向に引く様子はない。 俺は意を決して、海堂さんと向かい合わせになるよう体を捩った。 それでも海堂さんは起きなくて、熱をどうにかしたい俺は、海堂さんの腿にソレを擦り付けた。 「…………ァッ………ァンッ」 シュッ シュッ と布と布の擦れ合う音が静かな寝室に響く。 俺のモノはズボンにシミを作り、テントを張ってはち切れそうなくらいだ。 もう少し。 もう少しだけ。 「…イッ……………あっ」 ──イク。 そう思った瞬間に体が遠のき、何かと思って顔を上げると、呆れた表情の海堂さんが俺を見つめていた。

ともだちにシェアしよう!