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第13話

*** 「優、おはよ」 「おはよ、紫音!」 「前言ってた遊ぼっての、今日はどう?」 「え?!マジで?紫音バイト休みかよ!やった!!」 優が両手を挙げて喜ぶ。 もう店には出るなと言われたし、俺はクビ扱いといったところだろうか。 とりあえず優と遊んでから、海堂さんの家に顔だして、礼だけ言って元の生活に戻ろうと思う。 海堂さんが嫌なわけじゃない。 迷惑をかけるのが嫌なだけだ。 *** 「とりあえずカラオケ行って〜、そのあと俺のオススメの居酒屋行こうぜ!」 「そうだな、行くか」 今日の講義を全て終え、俺たちは高校の時に通いまくったカラオケに入った。 「なぁ、紫音。おまえ、本当に最近変わったよな。」 歌い始めて数時間、 お互い疲れたなと言って、歌うのをやめ、休憩をしていた。 「そう?」 「そうだよ!なんか色っぽくなったっていうか、なんだろ、これ。…………あ!わかった!さてはおまえ、童貞卒業したな?!」 「は?!してねぇよ」 童貞は卒業してないけど、処女は卒業した……。 なんて言えない。言えるわけがない。 「なーんだ。絶対あたりだと思ったのに!おまえもさっさと卒業しろよ〜?Ωだからとか思わずにさ、おまえはちゃんと人を幸せにする力あるだろ! 大体、この歳だったらさ、遊びでもいいわけじゃん?歳食ったらそんなホイホイ女と遊べないぞ。」 優は唐揚げを口に入れながらそう言った。 「まぁ、ほら。俺相手いないし。」 「何言ってんだよ!!おまえピザ屋のバイトでいい感じの人いたじゃん!!」 「三木さん?」 「そう!!三木さん!!めっちゃ綺麗だし、胸もデカイし最高な物件だろ?!」 「あー、三木さんはそんなんじゃないし。」 よく周りから言われていたけど、多分三木さんは俺のことを好きとかそういうわけじゃない。 俺も好きとかそういうのではない。 第一、俺はもう女の子を抱ける気はしない。 「優、もうこの話やめ。居酒屋行こうぜ。」 「あ〜!もうこんな時間?じゃ、行こっか!今日は俺が奢ったる〜〜!!」 居酒屋は優が出してくれると言うので、俺はせめてカラオケ代は出す、と会計を済ませた。 *** 「え、優。ここ?」 「おう!」 ──帰りたい。 めちゃくちゃ帰りたい。 「ほーら、紫音!早く!20時から予約してんだからな〜?」 ここは俺が働いていた『Rouge』のすぐ近くの居酒屋である。 客なんかと会ってみろ。 俺は、優になんと言い訳すればいい。 *** 「いらっしゃいませ〜!お、優くん!今日は美人さん連れてご機嫌そうだね!」 「大将〜!そうでしょ?めっちゃかわいいでしょ?!俺の親友!!」 優とこの居酒屋の大将が話してる間、俺は周りの様子を伺い、顔見知りがいないかを確認する。 「じゃあそこのべっぴんさん。優くんと一緒に奥の個室ね!お通し持って行くから待っててね!」 優が個室を予約してくれてて良かった。 俺は少し安心して、優と酒を飲み交わした。

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