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第16話

*** 体の節々が痛くて目が覚めた。 「海堂さん………?」 もう辺りに人の気配はなく、手足は自由になっているが首輪は外せないような仕組みになっていた。 鎖が長く、ある程度は移動できそうで、近くのテーブルに用意してくれていた朝食に手をつけた。 「………ウマ」 普通のグラノラだと思って食べたらめちゃくちゃ美味くて、用意されていた分ペロッと平らげてしまった。 やることがなくなってベッドに寝転ぶ。 「俺、これからどうなるんだろう……」 漠然とした不安を抱えながら、俺はそっと目を閉じた。 *** お昼を少しすぎた頃、海堂さんが帰ってきた。 「海堂さん…」 俺はどうすればいいかわからず視線だけをあげる。 「紫音、これ昼飯。今からまた会社戻るから」 そう言ってたくさんお弁当が入った袋を渡してくる。 わざわざお昼ご飯届けに帰って来てくれたの? 思わずそう聞きそうになったが、わざわざ聞くのも野暮だなと思いそのまま見送った。 「誰が弁当こんな食うんだよ…。」 袋の中には軽く5つは弁当が入っていて、俺は焼肉の入った弁当を1つ手に取った。 海堂さんは何を考えてるかわからない。 いきなり店を辞めさせたり、 都合のいいセフレにされるのかと思ったら、 俺を家に閉じ込めたり、 一体俺をどうしたいんだ。 何度も何度も同じことを考えて、 答えが出ないまま俺はまた眠りについた。 *** 「ただいま、紫音。」 ドアが開いた音で目が覚めた。 どうやらもう23時を回っているようだ。 「遅くなって悪かった。飯、いるか?」 海堂さんの手元を見ると、オードブルを買って来たようで、どうやらそれをつまみにワインを飲むらしい。 「金持ちって本当に家にワインセラーあるんだな。」 「いや?ただの趣味で作ってもらっただけだよ。」 海堂さんはワインセラーから年代物の高そうなワインを取り出した。 「食べなくてもいいから、こっちにおいで。」 少し穏やかな海堂さんに絆されて、近づこうとすると、 ガシャン…… そこまで鎖が伸びずに後ろへ引っ張られた。 「あぁ、悪い。今外すから少し待て。」 海堂さんが鎖を外し、俺が席に着いたところで、少し遅めの晩御飯が始まった。 *** 「これ、美味い。」 「酒が進むだろう?」 「普通に飲ませてるけど、俺未成年だからな。」 「ハハ。大学生なんて、付き合いでも飲むだろう?」 「優としか飲まねぇよ…」 チビチビと酒を飲み進めながらオードブルを食べ進める。 「おまえ、大学に行けないこと、文句言わないんだね。」 「だって……」 昨日、佐倉が言った言葉が少し嬉しかった。 『誠さんが探してる』 なぜかその言葉が嬉しくて、 連れ帰られた時の海堂さんの少し悲しそうな表情が、 『心配した』 そう思わせてくれて、なんだか嬉しかった。 「しばらくいい子にできたら、鎖も外してやるから。」 「うるせ。大学の費用もったいねーじゃん」 「それくらいこれから出してやるから。留年しても問題ない。」 反発する俺に、少し嬉しそうな表情をする海堂さんは、何を考えてるのはよくわかんないけど、悪い気はしなかった。

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