20 / 32

第20話

*** 朝、目が覚めると海堂さんはもういなかった。 リビングに行くと机の上にたくさんの店の資料が置いてあった。 どうやら好きなところに電話して、食事を取り寄せろということらしい。 グラノラを食べながら、今日の昼ご飯と夜ご飯に何を食べるか考えながら冊子をペラペラとめくった。 *** 何をするわけでもなく時間が過ぎる。 気を利かせてなのか、海堂さんは最新型のゲームやパソコン、人気のあるDVDなど用意して出て行ってくれたようだ。 俺はゲームを手に取った。 昔からゲームの類は金の無駄だと思って持っていなかったため、あまり操作は得意ではない。 高校の時に優に貸してもらったシリーズの最新版が出ていたので、それを5時間ほどしていつのまにか眠っていた。 「あー、もうこんな時間か」 起きるともう20時で、とりあえず寿司を頼んで、来るまでにシャワーを浴びた。 食事も済ませて、歯を磨いて、ベッドに潜る。 ──電話してもいいかな? 寂しくてスマホと対峙しながら悩む。 迷惑かな? メールならいいかな? 悩んだ末に、 【寂しいです】 その一言をメールで送ると、すぐに電話がかかって来た。 「も…、もしもし?」 『紫音、いい子にしてたか?』 「うんっ…!海堂さん、俺、いい子にしてたよ」 『寂しい思いさせて悪かった。あと2日、耐えれそうか?』 「……耐えれないって言ったら?」 『無理にでも帰るさ。』 本当は帰って来てほしい。 でも海堂さんの仕事に、俺のせいで迷惑かけるのは絶対嫌だ。 「我慢する。お仕事頑張ってください」 『あぁ。ちゃんと暖かくして寝ろよ。食事もちゃんと取れ。ジャンクフードばっか取らずに野菜も注文しろよ?』 「じゃあ明日はサラダだけにする…」 『ふはっ……、おま…、極端だな。あはは』 海堂さんがクスクスと堪え切れないように笑うのを聞いて、嬉しさと恥ずかしさ半々、少し寂しい気持ちが落ち着いた。 『悪い、今から会議だ。さっさと寝ろよ、おやすみ』 ツー、ツー、、、 電話が切れた。 もうすぐ日を跨ぐのに今から会議か…。 海堂さんってやっぱり本当はすごく忙しいんじゃん…。 迷惑かけないようにしなきゃ。 その一心で俺は目を瞑ってベッドに潜った。 *** ──眠れなかった。 いつもセックスだったり、抜いてもらったり、そうやって眠ることができた。 でも昨日は海堂さんは居ないし、セックス依存症を治すためにも、と思って頑張って目を瞑ってジッとしてたのに!!!!! 「ゔぅ〜〜〜」 気づけばもう朝だ。 いや、何度か意識は落ちかけた。 ただ、熟眠が出来ない。 だから何度も何度も目が覚めてしまって、 結果、寝不足である。 「なんで昼寝はできるのに夜眠れないんだ!!」 もうこうなったら、海堂さんが帰って来るまで昼夜逆転生活を送ろう。 俺はクッションに頭を乗せて丸くなった。

ともだちにシェアしよう!