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第29話
***
あれからまた1週間が経った。
海堂さんの帰宅時間は変わらず深夜の1時前後だ。
「……っ……、かいど……さん…っ」
俺は結局何も言い出せず、恋心は吐露もできずに胸にどんどん溜まっていった。
俺は22時という決まった時間に、前に教えてもらった箱を漁って、海堂さんを想像しながら玩具で自慰をすることに耽った。
こうすれば海堂さんの顔を見る前に眠りにつける。
海堂さんがしてくれると思うと満たされる。
でもこの時間の後にやってくるのは、
満足感でもなく、幸せでもなく、
必ず虚無感だった。
「もっ……、イク!!」
ピュッピュッ
「ハァッ……」
「……………………紫音?」
俺が欲を吐き出したとき、
後ろで扉を開く音と、大好きな人の声がした。
「どうした、紫音。なんで泣いてる?」
「……………え?」
海堂さんに言われて顔に手を当てると、ボロボロと涙が頬を伝っていた。
「何かあったか?」
俺の傍に来て、ギュゥっと抱きしめてくれた。
久々の感覚に安心して、身を全て預けた。
「ゆっくりでいい、話せるか?」
正直この質問になんて答えればいいか分からなかった。
俺が悩んでいるのは海堂さんのことだし、
今ここで言って面倒だと突き放されてしまえば、俺のここ2週間の我慢はなんだったんだって思う。
「………なんでもない」
「なんでもなかったら泣かないだろ?」
「〜〜っっ///」
さらに抱きしめる強さを強められ、涙が止まらない。
「だってぇ…、ぅっ……、海堂さんっ…がぁ……、ヒック…」
「俺?俺がどうした?」
「嘘ついたぁ!………グスッ」
「………嘘?」
「平日だって…、土日だって、仕事じゃないなんて知ってるんだからな…っ……ヒグッ…」
「待て。どこまで知ってる?」
海堂さんは驚きながらも多少焦っていた。
──あぁ、やっぱり俺に隠してたんだ。
もう嫌われてもいい。
思ってること全部言おう。
そう思って俺は海堂さんの胸を押して距離を取り、一気に捲し立てるように全てを吐露した。
「前まで首輪つけて家から出さなかったくせに!!!なんであの日から急に俺を突き放したんだよ?!Ωの俺が嫌になった?!それとも俺がセックス大好きだから??気持ち悪い??
俺に嘘ついて夜遅くまで何してたんだよ!!!そんなに俺が嫌ならちゃんと突き放してよ!!!
……形だけの優しさなんていらない!!!」
「紫音………」
「俺っ……、俺はっ、海堂さんのことが好き……っ!!!だけどっ……、こんな気持ちになるなら……うわぁ!!」
「──紫音、好きだ。」
「………ぇっ?」
「好き、お前のことが好き。四六時中おまえのことが頭から離れなくて困ってるくらいだ。」
海堂さんは俺を引き寄せ、耳元で何度も「好きだ」と囁き、頭にキスを落とす。
あれ??今俺が告ってなかったっけ??
頭がフリーズして、俺はされるがままベッドに押し倒された。
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