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第30話
***
チュ....チュッ.....チュ.....
「ま、まって、海堂さんっ…」
海堂さんの唇が耳から頬、首、鎖骨と滑るように下に降りていく。
「ひぁ!!」
「感じるか?ここ」
唇が俺の胸にたどり着いたとき、ピリッと甘い刺激が走った。
「おまえ、客にもここ弄られたことなかったのか?」
「あ、あるわけないだろ!!男なんだから!!」
「素質があるやつはここも感じるんだよ。ほら、ぷっくりしてきた」
「ヒッ………!!やだっ!やだやだ!!」
チュプ....チュクッ......
海堂さんの唇が俺の乳首を食み、今までに感じたことのない微弱な刺激に腰が跳ねる。
──っていうか、
「ま、まって!ストップ!!」
「無理」
「無理じゃない!!!だって、おかしいでしょ!?俺を放置して、女の人や新人のΩとヤッてたんですよね?!なのに俺が好きって都合のいいこといってこんな……!!」
「何のこと言ってるんだ?」
「とぼけても無駄です!!俺さっき仕事じゃないこと知ってるって言いましたよね?!」
「大体その話誰に聞いたんだ。」
「ゆ……、優が佐倉に聞いてくれたのを教えてくれたんです…。海堂さんのお仕事減らせないかって…。
そしたら海堂さんいつも20時には切り上げて、新人のΩの子と部屋に入ったりだとか、街で女の人といるのを見たとか……」
「はぁ……」
海堂さんが呆れたように溜め息を吐いたのを見て、詮索されたのに怒ったのかと不安になる。
「怒ってるんじゃない。その話は間違ってはないが、おまえが考えてるようなことはしてない。ただの誤解だ。」
涙で潤む俺の目尻に唇を寄せ、舌で涙を掬ってくれた。
「話せば少し長くなるが、おまえが発情したあの日、理性をなくして俺はおまえをめちゃくちゃに抱いた。
大切にしたかったのに、おまえのこと乱暴に抱いて、怖かっただろうに止めてやれなくて。
起きたら隣に青白くなって倒れてたおまえを見て、俺はおまえを失ってしまうんじゃないかって怖くなった。
俺は俺自身が怖かったんだよ、紫音。」
俺を見つめてながら話す海堂さんは、
今までに見たことがないくらい悲しそうな顔をしていて、
俺も心がぎゅっと押しつぶされそうになった。
「俺は本能的におまえの項を噛もうとした。そうなったら俺はおまえを絶対に離さないだろうし、ずっと家に閉じ込めると思う。
まだ未来あるおまえの自由を奪いたくないんだよ。
でもこれは俺の勝手な考えで、だからおまえと同じΩの気持ちを知ろうと思って話聞いてただけなんだ。」
「海堂さん……」
「誤解を招くような真似をして悪かった。」
「ううん…、俺こそ勘違いして海堂さんのこと責めちゃって、ごめんなさい」
「な、なんで泣くんだ」
全部誤解だったこと、
俺のことをこんなに考えてくれていたことが嬉しくて、
俺は今度は嬉しくて涙を流した。
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