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第5話 ※R18

「男同士だとか、血の繋がりがどうとか、国籍がどうとか何回言えば気が済むんだよ! イチイチうるせーつーの! お前らこそ他人じゃねーかっ!」 「……"今は立て込んでいるのでどうかお引き取りを…"と兄は言っています。」 荒れ狂う珊瑚はそう日本語で叫び、すぐ下の弟アビーは訪れた行政職員に体よく通訳した。 「珊瑚、そう怒らないでよ。 あの人たちも仕事なんだろうし…さっちゃんもビックリしてるよ。」 翔がそう言うと、珊瑚はハッとして膝をついて末の妹に謝罪した。 「……ごめん、サチ。」 「お兄ちゃん…サチたちどこにも連れて行かれない?」 「大丈夫。絶対行かせない。 俺と翔が守る。 約束する。」 「…おばあちゃんはどこに行っちゃったの?」 「……。」 幼いサチはまだ祖母の死を正しく理解出来ていない。しかし生まれつき身体の弱いサチは死への恐怖を誰よりも感じているようだ。 珊瑚は彼女の質問に答えられなかった。 突然の事で他の兄弟たちもショックが大きく、泣いたり怒ったり、夜は眠れなかったりと家族の時間とケアが必要だ。 「さっちゃん…! …おいで、あっちでツナちゃんと一緒に遊ぼう。」 翔はサチを連れて別の部屋へ行き、お気に入りのぬいぐるみを手に遊びに付き合ってくれている。不貞腐れるアッシュの相手も、1日でも休むと溜まるばかりの家事担当も翔だ。 前向きな彼は文句1つ言わず、手を貸してくれている。 役所や葬儀関係は珊瑚が取りまとめて、あちこち駆け回り、祖父に確認しながらいろいろと手続きを踏んでいるところだ。 アビーは放心状態の祖父を見守りながら、難しい年頃のフィンとレニのことを見てくれている。 明日、紅葉が帰ってきてくれるというので、多分少しは先が見える…はずだ。 その後、紅葉が到着し、なんとか葬儀も終えた。 愛に溢れた祖母のお別れにはたくさんの人達が集まってくれた。 祖父や珊瑚たちにも優しい言葉をかけてくれて、すぐ隣に住む親戚もいろいろ手伝ってくれた。 バタバタと時だけが過ぎていき、ムードメーカーだった祖母のいない家の雰囲気は暗いまま… みんな言葉少なく、落ち込んでいた。 そんなある朝、紅葉が洗濯機に洗剤を入れすぎて一面が泡だらけになり、大惨事だった。 でもそれを見たレニの「もうー!おばあちゃんに怒られるよ」と自然に出た一言で、何かが変わったのだ。 家族はみんな「そうだね」と泣きながら笑い合って、「おばあちゃんに怒られるから学校に行かないと」「ちゃんと勉強しないと」「部屋も片付けなきゃ」と前向きになれたのだ。 実家をアビーとフィンに任せて、珊瑚は翔、紅葉、アッシュとサチと共に自宅へ戻った。 紅葉は明日日本へ戻るので、ここから送る予定だ。 夜、サチを寝かせて、紅葉も早めに寝るねとアッシュと共に部屋へ入った。 珊瑚はリビングのソファーでボーっと横になりながら天井を見上げた。 そこへシャワーを出た翔がキスを落とす。 「止めろ。 …そういう気分じゃない…。 …っ!! ちょ…っ! おい…っ!」 起き上がった珊瑚の手を掴み、強引に口付ける翔。 珊瑚は抵抗して、勢い余り、翔の頬を爪で引っ掻いた。 「いって…!」 「あ…っ! ごめ…っ! …止めろって言ってんのに…! 紅葉もいるんだぞ?」 「聞こえないよ。」 「…やんないからな。」 「…いいよ。 俺もしたいって言うか、泣かせたいだけだし。」 「はぁー?」 「だって珊瑚…、泣いてないからさ。 おばあちゃん…亡くなったのに…。」 突然の訃報、もちろん珊瑚もショックでだった。 でも悲しいと泣いている暇も余裕もなかったのだ。 「俺の前で無理して欲しくないって思ってたけど、俺、手続きとか何も力になれなくて…情けなくてねー(苦笑)」 「翔…?」 「おばあちゃんと珊瑚って似てるよね。」 「え…?」 「責任感があって、愛に溢れていて、頑張り屋さん…。いつも自分のことより他の人を優先させて…。ちょっと気が強いとこまでそっくり…!(笑) 俺、おばあちゃんのことも大好きだったよ。」 その一言で珊瑚の涙腺は崩壊した。 ボロボロと溢れる涙は拭う間もなく、どんどん溢れた。 嗚咽混じりに泣く珊瑚を翔はずっと抱き締めていた。 「何で…こんな…っ! まだ、全然…恩返し出来てないのに…っ!」 「…うん。 でもおばあちゃんは見返りなんて何も求めてなかったと思うよ? 珊瑚だってそうでしょ? フィンたちに将来何かしてもらいたくて面倒見てる訳じゃないよね?」 「違うっ! …家族…だから…っ! おばあちゃんもずっと血の繋がりは…関係ないって…!俺と紅葉だけじゃなくて、みんな…大事って言ってたから。」 「うん…。」 「…翔…っ!」 そのまま求められるままに身体を繋いだ。 海色の綺麗な瞳から溢れる涙はとても美しくて、翔は思わず舐めとった。 「あ…っ、ん…、んっ! 翔…っ!」 「珊瑚…っ!」 少し強引に抱いてしまったので、身体を心配した翔だったが、今の珊瑚には必要だったようで、情事後は不思議とスッキリとした顔をしていた。 昔話をポツポツと話す珊瑚と、聞き入る翔。 「嘘っ!おばあちゃんっておじいちゃんの7個も年上だったのっ?! マジでっ?!」 「そーだよ? 知らなかった?」 「いや、年上なのは知ってたよ? でもこの前の誕生日の時、おばあちゃんにいくつになったか聞いたら…75才よって…! えー? ボケてなかったよね? 5才もサバ読んでんだけど!(笑)」 おばあちゃんの茶目っ気に笑う2人… 「何だー! 年の差婚も遺伝だねー。」 「そうか? …なぁ翔ー、お前煙草止めろよ。」 「何急に?」 「…今からもっと健康に気をつけて、お前は長生きしないと…っ!」 「…大丈夫…! 俺こっちきてから風邪1つもひかないからさー! 一服くらい良くない? 珊瑚もSEXしたら吸いたくなるって言うよね?」 「でも…! じゃあ…SEX止める?」 「……。」 「……。」 「「それは無理だな(苦笑)」」 2人は顔を見合わせると、同じ答えを導き出したようだ。 「絶対俺を独りなしないって誓えよっ!」 「…分かったって。…誓うよ。」 End

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