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第8話 ※微R18

「いないかな……」 偶然逢えたら運命的なのになと思いつつ、スマホを取り出して連絡するかどうか悩む翔。 間も無く奥の階段から誰かが降りてきた。 「カメラマンなんだ? 通りでいいカメラ持ってるなぁって思ったんだ。 でもカメラ下ろしたらすごいキレイな子だったからモデルさんかと思ったよー。」 「あー、そう…?」 もう100万回くらい言われたことのある台詞にうんざりした様子なのは珊瑚だった。 翔はそんな彼とばっちり視線が合い、隣を歩くナンパ男を睨む。 だが、男は翔の視線には気付かず珊瑚に話し掛け続けているようだ。 「日本に恋人とかいるのー?」 「恋人? んー、いないけど…」 その会話を聞いた翔はついカッとなり、クラゲに夢中なレニとサチの手を取ってズンズンと珊瑚の元へ歩み寄った。 「わ…! 何ー?」 「カケ?」 2人は戸惑っていたが、珊瑚の姿を見付けると安心したのか笑顔を見せた。 「珊瑚っ! 誰? 仕事相手? ナンパ?」 「…え…、そっちこそ誰?」 「…仕事相手ではない。」 珊瑚の返事に頷く翔。 レニとサチもいるのであまり騒ぎたくはない。 ナンパ男はバツが悪そうに軽口を叩いた。 「…もー、カレシ? 恋人いないって言ったじゃんー。 あ、セフレ?」 「……」 それは禁句だ。 2人は元セフレで、やっと恋人になって、超遠距離を経て、翔がドイツまで押し掛ける形で結婚までこじつけて、ようやく家族になれてきたかな?という過程なのだ。 翔は過去を思い返しつつ思わず言葉を失った。 すると珊瑚は… 「旦那だけど?」 「え? だ、旦那?」 ありえないといった表情で男は固まっていた。 珊瑚は左手の指輪を見せて微笑む。 ゴールドの結婚指輪はもちろん翔と揃いの物だ。 「そー。 ドイツで結婚してる。 こっちは妹と、末の妹…今は俺たちの娘。 弟たちと…息子もいるよ。」 法的に養子が認められたのはつい最近だ。 サチは翔の前では恥ずかしがって言わないけど、学校の先生や友達の前では翔のことをパパだと話している。 アッシュも時折テレビに映る翔の演奏シーンをサッカークラブの仲間にカッコいいだろと自慢している。 悔しいから珊瑚はまだ翔にそのことを教えてないが…。 「は? こども?」 「こんにちは。」 空気を読んだレニは完璧な笑顔と日本語で挨拶をした。やはり頭が良い。 レニに連れてサチも翔の影から顔を出した。 「…こんにちは。」 「俺の家族、全員面倒見てくれてんの、俺のダーリン。スゲー器デカイでしょ? まぁ、デカイのは器だけじゃないけどな。」 セクシャルな意味を込めて男の耳元でそう囁いた珊瑚はするりと翔の隣へ移動しピタリとくっついた。 普段そんなことしないのに、翔は嬉しくて鼻の下が伸びそうになりながら彼の腰を抱いた。 「もういい…?」 「おー。 もうすぐイルカショー始まるから見たらメシにしよー。」 そのまま男からフェードアウトすることにした。 「イルカさん?」 「私喉渇いちゃったー。」 「俺もー。サチも何か飲む? 翔、俺ら席取っておくから飲み物買ってきてー。コーラとりんごジュースと…レニは何がいい?」 「私も炭酸がいいー!」 「はい! 喜んでっ!」 旦那兼パシリだけど、全然いい。 むしろ幸せだ。 彼らの為に炎天下の売店にジュースも買いに行くし、ドラマーなので手の大きい自分はジュース4~5本くらい1人で持てる。…4本して珊瑚のを半分貰えばラブラブな感じもするし…。 ショーが終わったらみんなレストランに流れるだろうから、混む前に自分が席を取りに行こう。 そしてメニューをチェックして珊瑚に連絡して食券を買うのだ。 イルカショーのクライマックスは見れないけど、きっと珊瑚が写真を撮ってくれるだろうし、代わりに家族の笑顔が見られる。 「水族館最高…っ!」 翔は浮き足だって売店を目指した。 夕方… 「えっとー……さっちゃん? これは…ちょっと大きいかなー?」 「カケ、なんでも買ってくれるって言った…。」 うるうるの瞳は珊瑚と同じ青色で翔は狼狽えた。 「あ、うーん。そうだね? …でも…さすがに大きすぎて…飛行機に乗れるかなー?」 「ペンギンさんはサチのお隣に座るのよ!」 「えっと…(苦笑)」 サチが欲しがったのは超特大ペンギンのぬいぐるみ(7万円也) さすがに困惑する翔に珊瑚が助け船を出した。 「サチ、これは高すぎるし大きすぎる。 翔が優しいからってあまり困らせたらダメだ。」 「珊瑚…! そんな厳しく言わなくても…!」 「翔も、常識の範囲を教えないと。 …親だろ?」 「あ…うん。 ごめんね、さっちゃん。 …違うのでもいい? きっと他にも気に入るのがあると思うよ。 一緒に探そう?」 「うん。 …ごめんなさい、カケ。 この前お兄ちゃんが窓ガラス壊したからお金ないのよね…。」 思い出したのかサチはそんなことを話し始めた。旅行前、アッシュはサッカーボールを蹴っていてガレージの窓ガラスを割ってしまったのだ。 “怒られる、日本に行けない”と泣く彼を翔は自分がやったことにして珊瑚に報告していた。自分の小遣いからガラスの修理費を出したのだ。 「は? あれ翔じゃなくてアッシュがやったの?」 「あ! …いやー、なんて言うか…はは。 でも俺も関係あるから…!」 「ハァ…。 やっぱりな…。 そんな気はしてた。」 「隠しててごめんね…。」 「ったく、アッシュにも甘やかし過ぎ!」 怒りつつも優しい翔に嬉しそうな珊瑚。 ギュっと手を繋いでくれたのでこっそりキスをしようかと考えていると… 「お兄ちゃんー! キャンドル作るのやりたいー。 これって持って帰れる?」 「サチもやるー!」 レニが工作体験をやりたいと走ってきた。 いかにも女子が好きそうなキャンドル作りにサチも目を輝かせている。 「はいはい…。 分かったよ。 今日は特別だぞー。」 家族旅行だからなと珊瑚も優しい笑顔を見せた。 そして… キャンドル作りに夢中な2人を見守る翔にそっと呟いた。 「次は2人で出掛けようぜ?」 「…いいね、デート…かぁ。」 「家族になっても…まだまだ恋人気分も大事だよな?」 「もちろん! え、どこ行きたい? 何食べたい? ソッコー調べるよっ!」 「…とりあえずラブホでお前のこと食べたい。」 「ッ!」 「どーした? 調べとけよー?」 「はい、喜んで…(苦笑)」 End

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