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第13話 ※微R18

【久しぶりの投稿になります。 時系列的には「バンド内恋愛2」第168話の辺り。凪と紅葉がクリスマスにドイツに遊びに来た時です。】 ドイツでの生活にもすっかり慣れた翔。 もともと明るく前向きな性格のおかげか、どんな相手でもカタコトのドイツ語と英語、日本語にジェスチャーを交えてコミュニケーションをとるのが上手いのだ。 仕事の時は通訳をつけていたが、最近はお小遣い稼ぎのフィンに同行してもらったり、翻訳アプリ片手に一人でこなせるようになった。 仕事はバンド活動に加えて若手のプロデュース活動やスタジオミュージシャンとしても仕事をしていて、収入の面でも家族を支えてくれている。 日本ではよく再婚相手のこどもに対する虐待のニュースが問題になるようだが、翔には全く無縁の話。 ちゃんと行政のプログラムも受けてくれているし、何より珊瑚の弟、妹たちと本音で接してくれるのでみんな彼を信頼しているのだ。 「珊瑚の大事にしてる人たちを大事にしたいだけ。あと、みんな年齢的にはこどもだけど、一人の人間なんだからいろんな考えがあるのは当たり前。 後からこの家に入り込んだ俺が変に大人ぶるというか保護者面する必要とかないのかなぁって思って…。だってこっちの文化とか分かってないし、言葉もまだまだで…俺が教えてもらう方だし! まぁ、普段からあんま難しいこと考えてないからさー。みんなが楽しく過ごせればいいなって、ほんとそれだけ。」 普段ふざけてばかりの翔だが、やはり考え方は大人だ。彼が一生懸命なのがこどもたちにも周りにも伝わるから、みんなが優しく親切なのだ。 「あー…? 水曜…? ん? ごめん、アッシュ! これ何て書いてあるー?」 「社会科見学の申し込み水曜日までだって! お金はかからないけど、弁当いる。」 「おぉ。マジか! 俺仕事なんだよな…。 スタジオ遠いから早く出ないとで… 珊瑚に頼むか…。いやでも帰り遅いだろうし…。 やっぱ俺が…」 「大丈夫よ! サチがサンドイッチ作ってあげるー!」 「ほんとっ? じゃあ俺も早起きして手伝う…! …カケ、大丈夫だよ。」 「…2人ともありがと。 あ、おやつは? 日本だと持って行くけどどーなの?」 「えー、ないよー! 日本いいなぁ!」 家族との日常がこんなにも愛おしく感じるとは…翔にとっても意外だったが今、確かな幸せを感じている。 一方、幼い頃から珊瑚は弟や妹が増える度、長男である自分がしっかりしなければという責任感と緊張の中で過ごしてきた。 その反動からか、男遊びは激しかった。 幼少期からモテたし、街やバーで声をかけられることも多かったのでいつも相手には困らず、でも相手が本気でも自分の気持ちは定まらず…きちんとした恋愛はしてこなかったのだ。 翔と結婚し、穏やかな生活を手にした今、そのことを後悔することも多い。 いつの頃からか、珊瑚は性的接触はあっても抱かれること…挿入行為に苦手意識を示すようになったのだ。 でも実は翔はそこまで拘りはなく、不満もない。 珊瑚の舌ピアスを使った口淫は極上だし、年齢的にも色っぽさは増すばかり… 男同士の行為はどうしたって抱かれる側の負担が大きいので、珊瑚が頑張っているフォトグラファーは体力仕事な部分も多いし、無理はして欲しくないのだ。 しかし最近の物憂げや珊瑚の様子は心配ではある…。 「珊瑚ー? シャワーする?」 「んー…、これ吸ったら。 下行くならビールとってきて?」 「……最近どっちも多いよ?」 「…るせー…っ!」 煙草とお酒を指摘すればご機嫌ナナメだ。 火を消して布団に潜ってしまった。 「……物足りない感じならもう一回…今度はこっちもする?」 隣に横になって臀部を指先で撫でれば珊瑚がビクっと身体を強ばせるのが分かった。 「やめ…っ!」 「ん。 …ごめんねー。 ってか…なんか眠くなってきた! シャワー朝にしようか。 珊瑚起こしてねー。 おやすみ。」 背を向けたままの珊瑚を抱えて眠る翔。 その腕の中で、珊瑚は葛藤していた。 すぐに引いたのも何も追及してこないのも翔の優しさだ。 逃げてばかりな自分を責めることもないパートナーに申し訳なささえ感じている珊瑚。 「ごめん…。」 翔の寝息が聞こえた頃、そっと謝ることしか出来ない。 翔は元々ゲイではないし、自分と出会わなければ普通に女の子と結婚して、普通の家庭をもつことも出来たはずだ。 相手が男の自分では、こんな大きな家を与えてくれた彼の両親に返せるものもなく申し訳なささえ感じる。 もし叶うなら…とこどもを望む自分に「今日から2人の夢だね。絶対叶えようね!」と当たり前のように受け入れてくれる翔…。 そして弱さや苦手なこと、怖いってこともパートナーには伝えて大丈夫なのだと紅葉に諭されて迎えたクリスマス… 珊瑚は自分も歩み寄ろうと決めた。

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