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第3話自慰
散々甘やかされ、教えこまれた。
何も知らない身体を拓き、その身体が淫らな肉だと教えこまれた。
性器や乳首や後ろの穴だけでなく、
指の股から、耳の穴まで感じるところにされて。
喉の奥をふといもので鬱がれて、くるしみながらも感じるそんな身体をにまでされた。
自分で跨り欲しがって、踊って自らイケるようにまで。
淫らな淫らな肉体にされても、つねに満たされて。
甘い夜におぼれていた。
恋人は甘い肉に彼の身体を変えていく。
ある日突然連れ去られた。
そして閉じ込められる。
閉じ込めてからは指1本触れない。
閉じ込められて怒っていた彼は最初はそれでも構わなかった。
でも、何もない。
与えてくれないから。
綺麗な庭と綺麗な屋敷。
本はある。
でも、いる人は自分を閉じ込めた恋人だけ
彼は意味がわからない。
閉じ込められて何もされない。
大切には扱われている。
優しくされている。
でも、キスさえない。
閉じ込められる前には終わることのない夜を繰り返していたのに。
ここから出たいと思うのと同じ位、身体が疼く。
何故。
何故触れない?
何故何故?
誘っても駄目。
単調な刺激のない日々の中、彼は快楽を求めてしまう。
恋人が触れようともしない身体を自分で慰める。
触れてくれる人はいないから。
自分でするしかない。
想像する。
恋人の指、唇、そしてアレ。
だって恋人しか知らない。
他の誰も思い浮かべようがない。
恋人が姿を消す時間は決まってて、そこで彼は自分を慰めた。
彼は思い出す。
もうそれしかないから、懸命に。
思い出の中にしか淫らなものはないから。
自分を閉じこめた恋人にされた夜を脳裏に思い出し、
恋人の指を自分の指で再現してみせる。
あの指はどう乳首を触った? 摘んだ?回した?
右から?左から?
つま先で弾いて、押しつぶし、ゆっくりまわされてた。
そして・・・舐めて、吸われて・・・
彼は自分の想像の中に引き込まれていく。
涎を流しながら、身体を震わせて、自分の身体を慰めていく。
いやらしい声をあげる。
指で後しろをズポズポと掻き混ぜながら。
まるで、恋人に後から突かれているようなそんな幻影さえ感じながら、だらしなく感じて溺れる。
これは自慰なのに。
記憶は指以上の快楽を彼に与える。
尻をふる。
見えない性器が、恋人のあの気持ちのいい形のアソコを奥へと擦りつけてくることを想像した。
見えない性器は彼の奥の部屋をこじあけた。
想像であるはずなのに。
彼は奥をぶち抜かれ、悲鳴をあげて喜んだ。
教えこまれた身体は。
正確に記憶を再現した。
記憶と指だけで。
彼は失神してみせた。
恋人はカメラでそれを見ている。
恋人はそれを見て微笑む。
再現されるそれ。
彼が求めているそれ。
この欲望こそが恋人の欲しかったもの。
彼が愛しい。
こんなにも自分を求めて。
彼は記憶を頼りに自分とセックスをしている。
なんて可愛くていやらしい。
ただ身体を重ねるだけではこうならない。
脳の中で恋人を探す彼。
彼をカメラ越しに視る恋人。
触れ合わなくても。彼らは淫らに混じり合う
End
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