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 ――その日の放課後。結局、真城の言葉に甘えて、誰もいなくなった空間でノートを写す。  オレンジ色に染まった教室は、やっぱりとても綺麗で、夕日に照らされた真城の髪が輝いて見える。  やっぱ、綺麗だよな。  そんなことを考えながら、達筆な字で書かれたノートを写していた。  その時だった。ふいに窓から入り込む夕日が消え、教室が薄闇へと変わる。 「七瀬 椿姫。見ぃつけた!」  窓に立っていたのは、年の頃ならオレと同じくらい。短髪に黒髪。身長は真城と同じくらい。奴の名は……。 「お前は、ディガーッ!!」  奴はゼレンティーテに棲む、魔女の手下だ。 「お久しぶりです、王子。と言っても、御方に記憶を消されているからお覚えにはなられていらっしゃらないでしょうが」

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