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「えっと、その……やっぱいいや。大したことじゃねぇし」  恥ずかしくなって視線を逸らし、腰を上げた。 「椿姫? 何処に行くの?」  鞄を置いたまま、教室を出ようと背中を向けると、真城がオレを呼ぶ。  オレを抱いたあの日から、真城はオレのことを名前で呼ぶようになった。  これって、恋人みたいじゃない?  胸がドキってする。  だけど、恋人って思っているのはオレだけなのかもしれない。真城は、ただ単にオレを仲の良い友達のように思って、名前で呼んでるのかも。  だって真城、オレを抱いたあの一昨日の日から手を出さないどころか、キスだってまだなんだし。  オレひとりで浮かれてバカみたい。  ちょっと頭を冷やそう。 「ちょっと裏門にいる。すぐ戻るから」  真城にひと言告げてから、オレは教室を出た。

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