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先生を呼んでも返事がない。
どうやら職員会議みたいだ。
『明日は朝から職員会議があるから、2年の一限目は自習だ。いいな?』
――そういえば、最後のショートホームルームで担任の先生がそんなことを言っていたっけ……。
昨日の出来事をぼんやりと思い出す。
「…………」
がらんとした保健室には僕と黒江くんの二人きり。
苦しくて泣きそうなのに嬉しいなんておかしな感情に振り回される僕を前にして、黒江くんはたくさんの種類の薬がびっしりと並んでいる戸棚と向き合った。
「えっと、オキシドール。これ、か?」
黒江くんは薬のビンに貼られているラベルを読むと、棚から消毒剤とガーゼ一枚を取り出した。
「痛いと思うが少しガマンな?」
「っつ!」
「絆創膏は……ああ、これか」
「って、唇も擦りむけてるし。ここは薬塗れないぞ?」
「あ、大丈夫です。別にこのままでも……」
僕って黒江くんたちとは違って美形でもなんでもないから困る事なんて何も無い。
だから唇が切れていても食べる時に調味料が当たって痛いかなぐらいの他にはまったく問題はない。
へへって可愛くもない笑顔を作って黒江くんを見ると、黒江くんは何を思ったのか、突然僕の顎に親指を添えたんだ。
「?」
僕が不思議に思っていると、口に柔らかい何かが当たった。
息、できない。
だって僕、黒江くんにキスされてるんだ。
どうして?
なんでキスするの?
わからない、わからない、わからない。
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