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 ーーなんて考えていると、いつものように階段を踏み外してしまった。  身体が斜めに傾く。  転がる!  そう思ったら、だけど仰け反る僕を誰かが受け止めてくれたんだ。  この手の力強い感触は、昨日さんざん抱かれたから知っている。 「くろ、えく……?」   「おい、大丈夫か? 体調悪いのか?」 「っ!」  びっくりした。  だって今まさに、黒江くんのことを考えていたんだ。  澄んだ黒の目が僕を心配そうに見下ろしている。  好きな人に会えて嬉しい。  受け止めてもらえて嬉しい。  それなのに……。  僕、どうしてだろう。なんだか黒江くんが怖いって思ったんだ。  僕の体調を心配する黒江くんは、その手を伸ばす。  僕のおでこに触ろうとしてきた。

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