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 黒江くんはとても優しい。  僕の身に起きたことなのに、まるで自分のことのように怒ってくれる。 「っひいっ!」  黒江くんに怖じ気づいた先生は、飛ぶようにして逃げていった。  ーーああ、もういいや。  黒江くんが敵でもーー魔女の手先でもいい。  やっぱり僕は黒江くんが好き。  実感すれば、その分、大好きっていう気持ちが大きくなる。  それがいけなかったんだ。 「……好き」 「!」  黒江くんへの膨らんでいく想いが胸の中いっぱいになって、とうとう口走ってしまった。  しまった。  両手で慌てて口を塞いでも、もう遅くて……。  黒江くんを見上げると、彼は目をまん丸にして僕を見下ろしていた。  ああ、僕の気持ちを知られてしまった。

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