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★゜
やって来た海岸。
おかしいのはやっぱりここに誰もいないっていうこと。
昨日よりも少し冷静になって神経を集中させる。
そうしたら、周囲には結界が張ってあって、空間がねじられていたのに気がついた。
いったい誰がこんなことをしたんだろう。
魔女の手先のモンスターなら、きっとこんなことはしない。
だってあいつらは人間の負の感情を食らって魔力を増幅する。
人間は格好の餌食だ。大切な食料をわざわざ切り離すことなんてしない。
だからこれはきっと、第三者の仕業だ。
もしかするとツバキが結界を張ったのかな。
そう思って辺りを確認しても、ツバキらしき姿が見えない。
ツバキじゃないなら、いったい誰?
少し前に、ジェッタに教えてもらった気配を探す方法を試してみる。
そっと目を閉ざし、意識を集中して周囲を探る。
そうしたら、人の視線に気がついた。
視線を感じた岩場を見ると、そこには見知った顔の、その人がいた。
「黒江くん? どうしてここにっ!?」
びっくりした。だってまさか黒江くんがいるとは思わなかったんだ。
それにしてもどうして彼がここにいるのだろう。
結界を張ったのは黒江くんだろうか。
くやしいけど、黒江くんーーううん、ディガーならの魔力の強さはツバキよりも上だ。
結界を張ることも容易いだろう。
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