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伸ばされた触手はみんな、黒江くんが生み出した黒炎によって焼かれ、モンスターさえもが塵と化す。
あっという間の戦いだった。
あたりはしんと静まり返り、静寂に包まれる。
僕の中にあった触手は消え、戦いは終わりを告げた。
だけど、僕の緊張は未だ取り除かれない。
だって、黒江くんは僕の名前を呼んだ。
『一色』とーー。
どうして僕の名前を知っているの?
もしかして、一色 蓮がロトスだって、黒江くんは知っていたの?
ーーああ、そうか。僕の正体さえも見透かした上で、だから何度も転げそうになった時や先生にイタズラされていた時も助けてくれたんだ。
すべては、ロトスの力を手に入れるために……。
「どうして? どうして僕じゃだめなの? こんらに好きなのにっ!!」
苦しい。
悲しい。
こんなに黒江くんのことを好きになったのに、それさえも彼の目論んでいたことだったなんて!!
涙がポロポロ落ちていく。
これは快楽なんかじゃない。
悲しい気持ちになっているからだ。
僕は黒江くんに抱き留められるのもいやで、胸板を押した。
だけど黒江くんの力は強くて、びくともしない。
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