81 / 88
page81
よかったじゃないか。好きな人の役に立てるんだから……。
僕は鋭い切っ先を心臓に突きつけた。
固く目をつむり、そのまま貫こうとしたら――。
だけど、黒江くんが止めてきた。
「おい、何をっ!」
「いやっ、離して!! もう放って置いてよっ!! こんな気持ち悪くてとろくさい僕なんて死ねばいい! 死ねば良いんだ!!」
黒江くんの手を振り切って、ロングソードを持ち直す。
そんな僕の頬を、黒江くんは叩いたんだ。
「やめろっ! やめろって!!」
「あっ!」
パシンッって乾いた音がする。
本来なら、頬を叩かれてヒリヒリ痛いのに、でも今はそれさえも快楽へと変わる。
反り上がった僕自身から、先走りが飛んだ。
こんな自分が惨めで、もう泣き崩れるしかない。
「いやああっ!」
砂浜に蹲り、泣きじゃくる。
「一色、聞け!!」
そんな僕に、黒江くんは両手を伸ばして肩を掴むと、強く抱きしめてきたんだ。
「……お前の言うとおり、初めは魔女の言いつけでお前に近づいた」
「っつ!」
ホラ、やっぱり。黒江くんはそのつもりだったんだ。
ともだちにシェアしよう!