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第13話
加寿也君と出会う事のないまま、時間だけが流れていった。
あの戦いから70年ほど過ぎた頃、国は異国により戦火に晒され、僕は加寿也君の生まれ変わりを探す為に従軍記者として戦地に赴いた。
死ぬ事のない僕は最前線まで行き、そこで何度か死に直面したけれど、自分が戦死した事にして戦後新たな名前で復員し、その時の事をまとめ、再び作家活動を始めた。
取材と言って全国を旅して彼を探したけれど、今までと同じように時間だけが過ぎていくばかりで加寿也君には一向に会えないままだった。
戦いが無くなり平和になった国はどんどん新しい技術が発展していき、過去を知る僕にとって本当に素晴らしいと思える事の連続だった。
僕もその恩恵を受ける為にその都度最新技術に触れ、学び、なんとか使いこなして暮らしてきた。
150年目の桜。
今夜は月見をしながらお酒でも飲もうかな。
そんな事を考えていたら、僕のスマートフォンが鳴った。
「はい、もしもし」
「先生、突然で申し訳ありません。今週末なんですが……」
今、作品を書かせてもらっている出版社からだった。
編集担当者が変わるとかで、週末に僕の家に挨拶に行くという話をされた。
僕は今の出版社とは原稿をメールで送付し、編集の方とも会わずにメッセージや電話でのやり取りで進めていたけれど、新しい担当者は直接やり取りしたいという考えらしく、承諾してもらえないかという内容だった。
「分かりました。何時頃来られるのか、後ほどお知らせ下さい」
「ありがとうございます。担当になる住吉(すみよし)より連絡させて頂きます」
この時、僕は何かが起こりそうな予感を感じたんだ。
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