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第20話

住吉さんが寝ている間に、僕はシャワーを浴びてご飯の支度をしていた。 昔から好きだった料理。 家電製品というものがすごく便利になり、手軽に美味しい料理が沢山作れるようになってきた最近はもっと料理が好きになっていた。 気に入っている土鍋でご飯を炊き、魚焼き器で魚を焼き、冷蔵庫にあった野菜を入れて味噌汁も作った。 「おー、めっちゃいい匂い……」 出来上がった頃に住吉さんが起きてくる。 「おはようございます。食事を作ったんですが食べますか?」 「マジで?食う食う!」 屈託のない笑顔。 あぁ、この笑顔、よく知ってる。 僕の大好きな笑顔だ。 「お口に合うかどうかは分かりませんが……」 居間にある座卓に料理を並べ、住吉さんと向かい合って座る。 「いただきます」 住吉さんは手を合わせてから食べ始めた。 「んまっ!先生、料理上手なんてスゲーな」 「ありがとうございます。喜んでいただけて嬉しいです」 そういえば、加寿也君には僕の手料理を食べてもらった事はなかったな。 もし食べてくれていたら、こんな風に喜んでくれたのだろうか。 「先生、味噌汁お代わりしていいか?あとメシも」 「え、ええ、どうぞ。お代わり少しですがありますので」 「サンキュー」 やはり僕と食べる量が違うみたいで、住吉さんは作った分を全て残さず完食してくれた。 「ご馳走様でした!スゲー美味かった!!」 満足そうに笑ってくれてる住吉さん。 「洗い物は俺がするから、先生は休んでろよ」 「い、いや、そんな……」 「いいから」 食器を片付けようとすると、その大きな手が僕の腕を掴む。 僕はドキッとして、頬が熱くなるのを感じた。 「あ……ありがとうございます……」 「先生、覚えてないだろうけど、堅苦しく話すの止めて欲しい、って俺に言ったんだから先生ももう少しラフな話し方にしろよな」 「えっ、僕そんな事まで言ってたんですか?」 「そうだよ。俺も先生とは堅苦しい会話したくなかったから嬉しかったけどさ」 そう言って住吉さんは僕から取り上げたお盆を持って台所に向かって歩いていき、黒いスラックスのポケットから電子タバコを出して咥えると、そのまま食器を片付け始めた。 そういえば加寿也君、煙草を吸ってみたいって話してたな。 だから今、吸っているのかな。 いや、加寿也君じゃないから吸っているのかな。 僕は住吉さんに座ってろと言われたので、居間の住吉さんが見える位置に座って彼の事を見ていた。 鼻歌交じりでお皿を洗うその姿は、かつてそうやって鍛錬の道場の掃除をしていた加寿也君みたいだった。

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