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第23話
住吉君が僕の担当になって半年。
メールで送信していた原稿を住吉君に手渡す為、僕は外の大雨を気にしながらプリントアウトしていた。
突然降り出した雨。
住吉君、車移動だと思うけど傘持ってるのかな。
そんな事を思ってると、インターフォンが鳴った。
カメラを見ると、ずぶ濡れになった住吉君がいた。
「いきなり雨は降ってくるし、車がいきなり調子悪くなるしでサイアクだったんだ」
僕が用意したバスタオルで身体を拭く住吉君。
「先生、このままじゃ風邪引いちまいそうだから悪いけどシャワー貸してくんねぇ?」
「えっ、ええ、いいですよ、どうぞ。僕、タオルと着替えを用意しておきますね」
家に泊まる事が多くなっていた住吉君は、仕事用の着替えもいくつか家に置いていた。
住吉君がシャワーに入ってる間にそれらを持ってきて脱衣籠に置くと、僕は住吉君に渡す原稿の確認をしていた。
「サンキュー、先生。助かったぜ」
「い、いえ……」
住吉君は何故か上半身裸で僕の前に現れた。
「……!!」
その逞しい身体の左腕と脇腹に広範囲で広がる赤紫色の痣のようなものに、僕は息を呑む。
あの時、最期に加寿也君が血を流していたところだ。
「あ……あ……」
思わず声が出てしまい、僕はその場にへたりこんでしまう。
「ん?あぁ、これ?痣だよ。生まれつきなんだ」
この人が。
住吉君が加寿也君の生まれ変わりなんだ。
……どうしよう。
この人には記憶がない。
僕と過ごした、愛し合った記憶がない。
『あんたは生きろ。生きて、俺とまためぐり逢うまで絶対に死なせない』
ねぇ、加寿也君。
これはめぐり逢ったって事なの?
僕の呪いは解けるの?
「うぅ………っ」
脚が、加寿也君に皮膚を埋め込まれた脚が急に痛んでくる。
「先生、どうした!?」
「だ……大丈夫……です……気にしないで……」
痛い。
どんどん痛みが増していって、気を失いそうだ。
『あんたは俺が生まれ変わって再びめぐり逢い、天寿を全うするまで生き続ける……』
目の前には住吉君がいるはずなのに、だんだん住吉君の姿がぼやけていって、加寿也君の姿が見えてくる。
「かずなり……くん……」
「待たせたな、汐見殿。もう絶対にあんたを離さない」
低くて掠れた、僕の大好きな甘い声。
そう言って笑顔で僕を抱き締めてくれたのに、加寿也君の姿はだんだん薄くなっていく。
「加寿也くん、待って、僕を置いて逝かないで……!!」
僕は叫び、気を失っていた……。
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