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第24話

熱い。 身体がものすごく熱い。 どうやら、熱を出してしまったみたいだ。 「お、ようやく目が覚めたか」 聞き慣れた低音。 でも、それは住吉君のものだった。 住吉君は布団を敷いてくれて、僕をそこに寝かせてくれたみたいだ。 辺りは明るくなっていて、雨も上がっていた。 「だいぶ下がったけど、まだ熱あるな」 横で寝ていたんだろう、スウェット姿の住吉君の大きな手が僕の額に触れた。 「すみません……」 「気にすんな。ここで仕事させてもらうけど」 あぁ、どうして。 どうして君は違う声で生まれてきたの? その声でもう僕を呼んでくれないの? たとえ住吉君が生まれ変わりだったとしても、僕は加寿也君を愛してる。 住吉君じゃなくて、加寿也君を愛してるんだ。 「……恋人、いたんだな。ずっと同じ奴の名前、呼んでた」 額に触れてた住吉君の手が、頬に降りる。 「やめて……やめてください……」 同じあたたかさ。 それに流されてしまいそうになる。 この人じゃないって思ってるのに、声以外は加寿也君そっくりの住吉君に心を奪われてしまいそうになる。 「先生、好きだ。初めて会った時からずっと……」 住吉君がそう言って僕に接吻した。 その感触は、加寿也君と交わしたそれと同じで、僕の目には涙が溢れてきた。 「こ…困ります、そんな事……言われても……」 僕は泣いてしまったけれど、必死で流されまいと住吉君に言う。 「恋人の事、忘れなくていいから、俺をあんたの傍に置いて欲しい。ダメか……?」 「……っ……ダメです……。そんな事を言うなら、もう僕の前に現れないで……」 これ以上。 これ以上一緒にいたら、僕は住吉君に縋ってしまいそうだ。 この人じゃないって思ってるのに、それなのに。 「何でだよ。泣きながら言われたって納得出来ねぇ……」 「ゃ……っ……!!」 住吉君から逃げようとする僕を、住吉君が追い掛けて、抱き締めてくる。 「離して!!離してください……!!」 「言えよ。俺の事、恋人と間違えて呼んでただろ?カズナリって俺に似てるのか?だから俺を見てたまに悩んでるような顔してたのか?」 少し声を荒らげる住吉君。 僕はそんな住吉君が怖くて、震えてしまった。 「……悪い、怖がらせたな。俺、嫉妬しちまってんだ。先生の心をずっと離さないカズナリに」 僕を抱き締める腕が少し優しくなり、その手が僕の頭を撫でてくる。 「…………」 僕は。 僕は一体どうしたら。 「俺、先生の傍にいられるならどんな事だって受け入れる。だから傍にいさせてくれよ……」 「住吉君……」 その瞳が悲しそうな目で僕を見ていた。 ……嫌だ。 そんな顔、して欲しくない。 悲しませたくない。 「……分かりました。でも、その前に聞いて欲しい事があるんです。とても信じられないとは思いますが……」 僕は、心に決めたはずの思いを覆してしまっていた。

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